『トヨタ物語』をお読みいただき、ありがとうございます。感想はいかがですか。

長島:トヨタ自動車の歴史、その背骨となっているトヨタ生産方式について、たくさんの関係者一人ひとりとよく対話されて、正確に分かりやすくまとめられていると思います。
私自身は、過去に保険業務を改善する部署を立ち上げた時に、トヨタ自動車の方たちに手取り足取り一から教えていただいたので、特にトヨタ生産方式に関わるところは、背筋がピシッと伸びる思いで読みました。
どの仕事に就いている方も、仕事が思い通りにならず、どうすればよいか悩んだり、あれこれ考えあぐねることがあるのではないでしょうか。そんな時に対応策を導き出すヒントが、この本の中にあると思いますし、勇気もたくさん貰えると思います。
特に印象に残ったところとその理由を教えてください。
長島:心に残ったのは…ここ、309ページに出てきたフレーズです。
「本当の自信とは無闇な自己過信ではない。『できないかもしれない』と思ったことに対しても、『まてよ、いつかはできるんじゃないか』と信じて、着手する勇気のことだ」
成功させるという信念を持って、ひたむきに改善に改善を重ねて、成功させた経験をした人が、その道のりを振り返りながら、後に続く人たちに贈る。そんな場面にふさわしい言葉だと思います。
そして、新たなチャレンジをする時には、相当な覚悟を持つことが大前提ですが、悲壮な思いだけを抱えて挑戦し続けることは、かなり難しいのではないでしょうか。悲壮なほどの決意をしたとして、それと一緒に「いつかできるはずだ!」とワクワクした気持ちを持って、ひたむきにその仕事に向き合う。それが大切なのだと思います。
そして、その後にあるフレーズも印象的です。
「トヨタ生産方式を教えたり教わったりして双方が得たもっとも大きな財産とは本当の自信だ」
仕事でアドバイスをする時、自分では後輩に教えているつもりでいるのですが、実は自分が教えられているんだということを強く感じます。侃々諤々意見を交わすことも非常に意味のあることだと思っていて、そこでの気づきは間違いなく自分自身の糧になっていますし、そこで得られた結論も組織の幅を広げることに繋がっている。根底に、謙虚、感謝という気持ちを持つことの大切さを、この言葉から改めて教えられた気がします。