(前編から読む)

藤井:トーハンでも「自ら考える人材」育成のため、トーハンセミナーハウスというものをつくりました。
そこで皆で勉強しようということなんですけど、人事部が決めた研修だけじゃなくて、自主的に勉強会などを開ける場所として活用してくれることを期待してのことです。
それと、これは普通の企業では当たり前にやっていることだけれども、社員から公募して大学院に派遣する制度をつくりました。それからニューヨークに海外研修に行かせる海外派遣制度も。
今、年間3人派遣していますが、帰ってきた連中が自分で講師となって、20人ぐらいの若手を集めて月2回、1年間ワンクールで勉強会をセミナーハウスでやっているんです。
セミナーハウスを作った甲斐がありましたね。
藤井:そもそも今、セミナーハウスがある場所は、賃貸マンションを建てる計画で着工寸前だったんです。
飯田橋駅から徒歩5分。よいロケーションですからかなり家賃収入も見込めそうです。
藤井:でも、それは目先の話であって…。
「米百俵」の米を食べ尽くしてしまうことになる。
藤井:それではダメだと。そうじゃなくて、人を育てるために使おうと。
でもすでに進行中の計画をやめるのはなかなか難しい…。
藤井:それは覚悟をもって決めました。経営者の役割は、リスクを取って決めることですから。
セミナーハウスには宿泊設備もあるんです。泊まり込みで一緒に勉強するのが一番仲良くなるということもあってね。
互いの領空侵犯もしやすくなる。
藤井:会社の研修も外部講師は原則禁止。内部の社員が講師をやるようにと、それは厳しく言っています。講師に指名される、選ばれることでモチベーションが上がります。そして実際に講義をしようと思ったら、3倍、5倍の勉強が要る。それが成長につながります。
一般論じゃダメなんです。現場が分かっている人間が、今、自分たちに何が足りないのか、自分で考えて、カイゼンしていかなきゃ。
トヨタ生産方式の話をこの本で知れば知るほど、自分が取り組んできたことと重なって、非常に共鳴したんです。とにかく物事は強く思って深く考えて、やるときはとことん真剣にやる。これを繰り返していく。これしかない。