出版物取次販売を手掛けるトーハン社長の藤井武彦氏は新刊『トヨタ物語』を読んで『トヨタ生産方式』発売時のエピソードに目を留め、出版流通のカイゼンに思いを馳せる。藤井流の読み解き方を『トヨタ物語』の担当編集Sが聞く。その後編。

■重版出来!『トヨタ物語
 トヨタはなぜ強いのか――その本質に迫る巨編ノンフィクション。日経ビジネス連載「トヨタ生産方式を作った男たち」に書下ろしの新章などを加えた圧巻の408ページ、ついに刊行。早くも4刷。日経BP社刊

前編から読む)

藤井 武彦(ふじい・たけひこ)
トーハン社長/1941年、島根県出身。63年、中央大学法学部卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。94年、トーハン入社。同年、取締役業務改革推進室長、95年、常務取締役経営計画本部長兼財務・システム担当、96年、専務取締役経営計画本部長・業務改革推進室長兼財務・システム担当、97年、取締役副社長、2006年、取締役退任、財務顧問。12年より現職。

藤井:トーハンでも「自ら考える人材」育成のため、トーハンセミナーハウスというものをつくりました。

 そこで皆で勉強しようということなんですけど、人事部が決めた研修だけじゃなくて、自主的に勉強会などを開ける場所として活用してくれることを期待してのことです。

 それと、これは普通の企業では当たり前にやっていることだけれども、社員から公募して大学院に派遣する制度をつくりました。それからニューヨークに海外研修に行かせる海外派遣制度も。

 今、年間3人派遣していますが、帰ってきた連中が自分で講師となって、20人ぐらいの若手を集めて月2回、1年間ワンクールで勉強会をセミナーハウスでやっているんです。

セミナーハウスを作った甲斐がありましたね。

藤井:そもそも今、セミナーハウスがある場所は、賃貸マンションを建てる計画で着工寸前だったんです。

飯田橋駅から徒歩5分。よいロケーションですからかなり家賃収入も見込めそうです。

藤井:でも、それは目先の話であって…。

「米百俵」の米を食べ尽くしてしまうことになる。

藤井:それではダメだと。そうじゃなくて、人を育てるために使おうと。

でもすでに進行中の計画をやめるのはなかなか難しい…。

藤井:それは覚悟をもって決めました。経営者の役割は、リスクを取って決めることですから。

 セミナーハウスには宿泊設備もあるんです。泊まり込みで一緒に勉強するのが一番仲良くなるということもあってね。

互いの領空侵犯もしやすくなる。

藤井:会社の研修も外部講師は原則禁止。内部の社員が講師をやるようにと、それは厳しく言っています。講師に指名される、選ばれることでモチベーションが上がります。そして実際に講義をしようと思ったら、3倍、5倍の勉強が要る。それが成長につながります。

 一般論じゃダメなんです。現場が分かっている人間が、今、自分たちに何が足りないのか、自分で考えて、カイゼンしていかなきゃ。

 トヨタ生産方式の話をこの本で知れば知るほど、自分が取り組んできたことと重なって、非常に共鳴したんです。とにかく物事は強く思って深く考えて、やるときはとことん真剣にやる。これを繰り返していく。これしかない。