苦難と言えば、クレディセゾンもかつてセゾングループ解体という大波にさらされました。

林野:確かに大変だったし、今もいろいろなことが起こっているし、これからも起こるでしょう。でもかつてのトヨタのように、このままでは会社が潰れて皆が路頭に迷ってしまうという危機感とはかけ離れていた。今後のことはわかりませんが。

トヨタは「引きが強い」

 トヨタの歴史を辿ってみて興味深いのは、厳しい状況になると"英雄"が登場してくることですね。自動車が全然売れない時には「販売の神様」と呼ばれた神谷正太郎さんが出てきてピンチを救い、喜一郎さんが労働争議で辞任した時には石田退三さんが出てきた。社長になった途端に朝鮮特需で業績を急回復するなんて、とんでもない強運の持ち主だよね。

林野さんお得意の麻雀でいうと、引きが強い。

林野:そう、信じられないくらい強い。もちろん、しっかりしたモノづくりの取り組みがあってこそ、そうした運も回ってきたのだろうけれど、それを逃がさずつかんだからこそ、今のトヨタがある。

 そんなことを感じたのも、それぞれの登場人物と、彼らがいた環境、時代背景がしっかり描かれているからだろうね。本当に良く調べてある。野地さんは工場に70回も行ったんでしょう?

はい。疑問に思ったら、現場に行く。それを繰り返して。

林野:それって歴代のトヨタの経営者と同じだよね。何より現場を大事にする。言葉では誰でも言えるけど、実践し続けるのは容易ではないことです。そうやって書かれたこの本はトヨタの集大成だし、なぜトヨタが世界一の自動車メーカーになったかということが全部書いてある。トヨタが20万冊ぐらい買うべきだな(笑)。

ぜひそうなってほしいです(願)。

林野:そう、トヨタといえば、私が西武百貨店に入社して数年目、もう50年近く前に、同期の仲間と「2000年にトヨタはGMに勝てるか」というのを予想したことがあってね。