待てる分は、いつまでも待つ

手取り足取り大事に育ててという感じとはだいぶ違いますね。でもこわいだけとか、横暴だっただけなら、現場の人たちはあれこれくふうして働こうとは思いません。たんに厳しいだけではない。

井手:トヨタ生産方式の伝え方で、印象に残ってるのは、「俺たちは知識を伝えるために仕事をしてるんじゃない。考える社員を作るんだ、意識改革なんだ」ということ。

 ほんと、その通りなんですよ。僕らもビール造りの素人が集まって、世の中ではあまりやってないような活動をしているのですが、それもスタッフが考えてくれないとできないことです。昨日も喧々諤々、スタッフと話していて、「そんなこと、どうやったらうまくいくんですか」と聞かれ、「それを探すのが俺たちの仕事なんだよ」と。

 僕らの仕事は考えること。誰も答えを教えてくれないし、僕自身もわからない。でも、とにかく考えて新しいことをやって行く。みんなで考え、みんなで意見を出し合って、失敗してもどんどんやっていく。僕らの会社はトヨタには遠く及ばないけれど、でも、考えながら改善していったり、新しいことをひとりひとりが生み出すところが強みだと思うんですよ。意識改革とか、考えることを続けていくことが大事。まさにそうだよなと思いました。でも、トヨタに比べると徹底具合が足りない。この本を読みながら、トヨタはここまで徹底していくのかと圧倒されました。

つねに「もっと考えろ」ですね。

井手:(トヨタ生産方式を体系化した)大野(耐一)さんは「俺が考えられるようなこと考えるんじゃない」と叱るわけでしょう。時代背景もあるんでしょうけれど、みんな苦労されてますね。特に生産調査室のチームの方たちは、ほんとによくやってこられたな、と。昭和のたくましさ、その世代の人たちの強い信念、強いタフさを感じました。

井手さん自身、質問を投げかけて、待つタイプですよね。

井手:そうですね。

井手さんは我慢できる方ですか。

井手:まあ今は各チームのメンバーたちに大きく権限を委譲して、彼らがほとんど考えてくれるようなフェーズに入ってきました。ただ難しいことの判断、世の中で初めての試みの場合は、僕も入って議論をすることにしています。それ以外はアドバイスにとどめて、基本的には待つようにしています。

 「僕はこう思う」と強く主張するときもあるけれど、基本的には待てる分は、いつまでも待つ。一見、じれったいところもあるけれど、それを貫くことで、社員は鍛えられ、考える力が強くなっていく。