井手:このところ、なかなかまとまった時間が取れなかったもので、『トヨタ物語』の半分までは仕事の合間とか移動中、夜に読み、いいなあと思ったところのページを折ったりもして、少しずつ読み進めました。残りの半分は先ごろの休暇中に。そして、今はまた気に入ったところを読み返しています。結局、この1カ月ずーっと鞄に入れっぱなしだったので、きれいな表紙がくすんで破けてしまって…。
いえいえ、表紙が破れるほど読んでいただくなんて、作った人間にとってとてもうれしいことです。
はるかにすごいベンチャー魂
井手:トヨタ自動車といえば、僕が物心ついたときからすでに大会社でした。自分がビジネスをやり出してトヨタのすごさがわかったときにはもう世界一になっていて。同じ製造業ではあるけれど、あまりに違いすぎるなという目で見ていたんです。
しかし、読み始めると、いつの間にかトヨタの物語に、自分の会社と自分の物語を重ね合わせて読んでいました。当たり前と言ったら当たり前なんですけど、トヨタも85年前に起業したときはベンチャー企業だったんですね。僕らベンチャー企業の人間にとってみれば、トヨタだってベンチャーだったんだ、俺たちだって、頑張っていればいつかはトヨタみたいになれると感じられることが嬉しかった。
文字通り、何もないところから、自動車をつくろうと決意して実行する。決意と行動力のベンチャーですよね。
井手:はい。おもしろいなと思ったのは、当時アメリカでさえ、まだ車は200数十万台しか走っていなかった。それなのに、(トヨタ自動車創業者の)豊田喜一郎さんは年間1割として、日本でも20万台ぐらいは売れる、だから会社を作る、と決めた。今のレベルよりはるかにすごいベンチャー魂だったんでしょうね。
トヨタの経営者は喜一郎さんにはじまり、いつも現場とつながっています。偉くなると現場から離れて数字ばかりみている経営者も少なくない中で、これこそがトヨタの強みだと思うのですが、井手さんもずっと現場を大事にされていますよね。
井手:これを読んで初めて知りましたけど、トヨタのトップの人たちは確かに現場を大切にしている。みんな製造現場のたたき上げです。トヨタ生産方式って、ビジネスパーソンなら名前だけは知っているけれど、これは現場の知恵なんですね。現場で通用する、現場ならではの知恵。
豊田章男社長も厳しい人たちに鍛えられて、やがて自分で現場の仕組みを変えていく、という経験をされています。
井手:ねえ、出てくる人が全員こわい人みたいな感じですよね。現代社会ではたぶんかなりいろいろ問題になりそうな…(笑)。
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