カネを早く手にすること

松浦:大野さんの言葉でけっこうガツンときたのが、モノをつくるだけじゃなくて、代金を回収するまでのタイムラインを見て、そのタイムラインを限りなく短くするんだと言っていることです。

モノづくりというと、いいものができるまでしっかりやれみたいな話が多いですね、一般的には。

松浦:そう。さっきの無関心につながる話なんです。モノづくりをしていればそれでいいという態度は無関心そのものです。

 「俺はこれだけいいものを作ってるから、あとはお前らが売ってこい」

 一見、カッコいいかのようだけれど、次の元手となるお金を稼がなければ、もっといいモノは作れない。モノづくりの現場にいても、お金が返ってくるところまで関心を持つ。お金の流れをしっかり把握することも…。

モノづくりの仕事。

松浦:そうです。そしてもうひとつ本書の言葉で勉強になったことがありました。エリヤフ・ゴールドラットという学者が言ってます。

 「靴ひもを結べるかい。じゃあ、今度はそれを口で説明してくれるかい」

 これもすごい。これだけで僕はおそらく3年ぐらい楽しめる。靴ひもの結び方を口で説明できるようになることは自分にとってひとつの課題になりました。

 僕は今ベンチャーでスタートアップ企業の経営をやっていますが、大切なことは、ユーザーに伝える、社員に伝える、経営者同士でさまざまな話を伝えていく…。

 いかにわかりやすく、人に伝えるかは大きな課題なんです。靴ひもの結び方を口で伝えられるかどうか。その問いに、あらためて考えさせられました。

自分がやれることを人に伝えるのがいかに難しいか。

松浦:やれることと教えることは違うんです。そして、あとはやっぱり情熱ですね。人に教える時に、間違いを恐れていたら意見はできない。もし、間違えていたら、このあいだ言ったことは間違いでした。申し訳ないと伝えればいいだけの話なんです。でも、それがいちばんできない。僕らみたいな若い者は特にできない。頭を下げるという、ひとつの方法でさえ、下手をすると失いがちになるんですよね。

 やはり、自分の手を汚すこと、自分の手で触ることがもっとも大事なんですよ。僕らは今、「おいしい健康」というヘルスケアをテーマとしたウェブサービスを提供していますが、医療従事者とか患者とか現場の人に会って、そこを見て、そして、話を聞く。この本のなかにも「わからないことがあったら現場の人に聞け」とあるけれど、まったくその通りです。机上で考えるのではなく、出かけて行って患者さんや健康不安を持ってる人の話を聞く、そして、ドクターからも話を聞く、学会に行く…。僕らはそればかりやっている。でも、その態度を失ってしまったらもう何も新しいことは作れない。