「人はどんな逆境にあっても、学び、カイゼンすることができる」。新刊『トヨタ物語』(野地秩嘉著)を「読書家の後輩」にも送ったという松浦弥太郎氏は、そうつぶやいた。その真意とは。松浦氏と『トヨタ物語』のつき合い方を、担当編集Sが聞く。その後編。

■重版出来!『トヨタ物語
 トヨタはなぜ強いのか――その本質に迫る巨編ノンフィクション。日経ビジネス連載「トヨタ生産方式を作った男たち」に書下ろしの新章などを加えた圧巻の408ページ、ついに刊行。早くも4刷。日経BP社刊

前編から読む)

松浦:私も今デジタルというかITのベンチャーを立ち上げていますけれども、こんなふうにテクノロジーが発展した現在でも、何事かを生み出している僕らは、同じ人間なんです。(トヨタグループ創始者の豊田)佐吉のような100年前の人と僕らはたいして変わらないんですよ。感情とか、自分たちの思考みたいなものとか、習慣とか、そういったものはたいして変わらなくて、同じ人間がやっているわけです。そのなかでやっぱり大事なこととは、この本に書かれているように、常に疑うこと。もっといい方法があるんじゃないかと考え直す態度です。そして、本書のなかのリーダーたちは変化を受け入れる勇気を持っている。

離れずに、見る

松浦 弥太郎(まつうら・やたろう)
くらしのきほん」主宰/エッセイスト
2005年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年7月にウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。2017年、(株)おいしい健康・共同CEOに就任。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。

リーダーが現場に寄り添ってますね。

松浦:ええ、リーダーは部下たちを見ていて、離れない。

離れないという表現、すごくしっくりきます。(トヨタ生産方式を体系化した)大野(耐一)さんが部下に「この丸のなかに立って見とけ」と、今だったらパワハラと言われそうな場面が本に出てきます。だけど、そういうふうに丸を描いて、ここから見るんだぞ、と教わるってすごいことだと思うんですよ。大きな工場のなかで、そこから見れば必ず何か大切なことが見えてくるぞ、と導いてくれているわけですから。

松浦:ものすごいことです。お前の仕事は「見ること」だと教えている。

 それが仕事であり、成果はそのなかから生まれる。成果が上がると、プライドが生まれ、みんな元気になる。

 今は何でも答えを教えてしまうことが増えている。それは一見、効率的なようでいて、失ってるものもある。トヨタという会社は現場で見ること、学ぶことで組織を強くしている。そういうことをこの本は教えてくれています。トヨタがすごいなと思うのは、生産方式なり、カイゼンなりが、どんな業種でも通用するということ。

そうですね。トヨタは今、車を作っているけれど、別のものを作っても……。

松浦:そう、何でもいいものを作れる会社なんですよ、トヨタの生産現場は。