働く喜びとは?

笑顔の大野氏と張氏(写真提供:トヨタ)

ありがとうございます。さて、張さん、最後におうかがいしたいことがあります。あの時代の働く喜びとは、いったいどういったものだったのでしょうか。

:うん、僕はこう思うんだ。

 考えて働くことができる、それが喜びではないのか、と。

 大野さんがよく言っていました。

 「人間が動物とは違うところはどこだ。それは考える能力を持ってるということだ」

 だから、現場で、お前たちは何も考えんでいいから、言われた通りやれなんてことは絶対にやっちゃいかん。それは人間性をいちじるしく害する。現場でやりにくい、危ない、あるいはもっとこうやれば速くできる、楽になる、そういうことをどんどん提案させて、それでみんなで直すんだ。オレが言う「考えろ」とは仕事が楽になることなんだ。

 働く幸せとは、ひとりひとりが考えて楽になる道を提案することなんじゃないかと思います。大野さんがやってこられたのはそういうことなんですよ。労働強化とは真逆のことなんです。

 野地さん、僕にとってはこういう記録がきちっと残ったことがありがたい。師匠たちが一生かけてやり遂げたことが記録に残って、こんなありがたいことはないと思ってます。

 そして、トヨタの若い社員にはあの方たちの使命感と覚悟を読んでほしい。僕らはトヨタが小さかった頃をよく覚えているけれど、今はなかなかわからないでしょうね。でも、トヨタはベンチャーであり続けることをわすれちゃいけない。もし、大野さんが生きておられたら、「張、トヨタにはやることはたくさんある。しっかりしろ」とまた、ぼろくそに叱られるんじゃないかな。いつまで経っても叱られる。でも、私の幸せですよ、それは。

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