機械を見てるのは仕事じゃない

確かに、他の自動車屋さんは馬車のような乗り物作りから発展しているようなケースが多い。ひとつの流れを作ろうという考えには到達しないかもしれませんね。張さんの話で頭が整理されました。

:大野さんも元々は豊田紡織におられた。そこから自動車に来られたから、ジャスト・イン・タイムの思想もすぐに理解されたんでしょう。そして、「生産性が低い」とも感じたそうです。

 「紡績では若い女性がひとりで2工程も3工程もやっている。機械を何台も受け持っている。ところが、トヨタに来てみたら、女性の親父ぐらいの年齢の職人がひとり一台ずつ機械の前に座ってやっとる。それで生産性が上がるはずはない」

 大野さんは作業者、というより職人ですね、その頃は、彼らを立たせて機械を2台持たせる、あるいは3台持たせることをやったわけです。

世間やマスコミからは一斉に労働強化と糾弾されるわけですね。

:当時の職人はものすごくプライドが高かったと言ってましたね。

 「俺は旋盤士だ」という。「フライス盤なんか旋盤士のやることじゃない」と頑として受け持とうとしない。それで、今度は鈴村さんが出てきて、自分でフライス盤の操作を覚えたそうです。みんなを帰して、ひとりで残業してフライス盤の技術を学ぶ。そうして、ちゃんと動かせるようになってから旋盤士だと威張っていた職人に「俺が教えてやる」と…。おふたりはそこまでやって、トヨタ生産方式を広めていったわけです。

 大野さんはこうも言ってました。

 「機械が仕事をやるのと、人が仕事をやるのは分けて見るんだ」

 人の仕事は取り外し、検査、取りつけ、ボタン押し。それくらいしかないぞ。あとは全部機械が働いてるんだと。だから、機械が動くのを見てるのは仕事じゃないんだ。

 「火花が散ってるのを見てるのなら、花火を見てるのと一緒だ。それに給料払うのはおかしい。金を出してもらいたい」

 そんなこと言ってた(笑)。

大野耐一氏(写真:廣瀬 郁)

(後編に続く)

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