輸出を品目別に見ると、全体の2割を石油・ガスが占める。石炭などの鉱物性燃料が14%、パーム油などの動・植物油が11%と続く。これらトップ3だけでおよそ半分を占めるが、すべて資源なのだ。インドネシアは石油の輸出もしているが、それ以上に輸入している「純輸入国」であるため、資源価格の下落は経済成長にとってプラスに働く面もある。だが、問題は中国向けに輸出が多かった石炭や銅といった鉱物資源の価格下落や需要の減少にある。

 中国税関総署の統計によると、中国の輸入額は2015年通年で1兆6820億ドル、前年比14.1%減と大きく減らしている。その中でも目立つのがインドネシアからの輸入額で、前年比で約2割も減らしている。その中核が石炭や銅だ。資源価格の下落もあるが、輸入量の減少も響いているという。

 外貨を稼ぐ優等生だった資源だが、中国経済の減速と資源価格暴落の影響を大きく受けており、景気回復の足かせになりかねない。

輸出に向けたインフラが未整備

 インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)によると、同国内での生産能力は年間190万台という。だが、コンサル会社の米フロスト&サリバンは、今年の同国内の販売台数は前年比4.3%減の96万9100台に減少すると予想している。生産能力の半分しか販売できないことになる。となれば、輸出に向けるしかない。だが、そこに未整備なインフラの壁が立ちはだかる。

 「港はパンパンで、そこに持っていくまでの道も大渋滞。これでは輸出計画なんて立てられないよ」(日系自動車メーカーの社員)

 2014年には輸出台数は20万台を超えたが、同じ東南アジア諸国連合(ASEAN)でライバルとも言えるタイは120万台を輸出するレベルだ。インフラ整備が進まず、輸出増の足かせとなっている。インドネシア政府は昨年、50兆円規模の5カ年インフラ整備計画をまとめた。港湾や道路を整備して経済成長を加速するのが狙いだ。だが、2015年の予算執行は当初、遅々として進まなかった。

 上半期を終えた段階での執行率はなんと、たったの1割。10月時点でようやく4割を超えた。ところが、年末には突如「9割を執行した」と政府が発表している。どういうことか。

 2014年に庶民の代表として大統領に就任したジョコ・ウィドド氏。拡大しつつあった格差の解消を掲げて国民から人気を誇ったが、就任後の政権の舵取りには苦労している。「彼には人脈がない。ジャカルタ州知事を経て大統領になったが中央政府に太いパイプがなかった。官僚を掌握できておらず、予算執行を命じても遅々として進まない。結局、元の大臣や族議員に頼らざるを得ず、時間がかかっているようだ」(現地建設企業トップ)

 インフラ整備の遅れを指摘され、政府は予算執行に躍起になっているというわけだ。入札を経ず、直接特定の業者に業務を発注する「匿名発注」が横行し、ほぼ丸投げの公共事業も多いという。こうした中、ジャカルタ市内を中心に渋滞はさらにひどくなっている。空港から市内までクルマで30分の距離だが「混雑時は3時間は見る」のが通例になるほどだ。

港湾整備も白紙撤回

 公共事業の増加は、低迷するインドネシア国内の経済を押し上げることになるだろう。だがプロジェクトが突然、変更になることは依然多く、企業がビジネスのしやすい環境はなかなか整わない。その一例が、西ジャワ州チラマヤ港の整備計画の白紙撤回だ。

 同港の整備は近隣に工場を構える自動車メーカーにとってはまさに悲願だった。混雑するジャカルタ港とは別に、自動車生産拠点に近い港を整備して輸出拠点にするのが目的だ。

 これは前政権のユドヨノ大統領時代に、日本政府とインドネシア政府が協力することで合意した首都圏投資促進特別地域(MPA)プロジェクトの1つで、最重要事業に位置付けられていた。しかし、昨年4月にユスフ・カラ副大統領は港の建設予定地を別の場所へ移転すると表明した。当初の予定地には石油ガスのパイプラインや関連施設があり、石油ガス生産への影響が懸念される、というのが変更の理由だったが、それは前から想定されていた事情のはずだ。

 結果、プロジェクトは白紙撤回。再び調査からやり直すことになり、港湾整備による輸出の拡大は遠のいた。現地に進出している自動車メーカーや二輪車メーカーの輸出計画への期待も萎んだ。国内の需要が低調で、輸出に向けたインフラも整わない。撤退を検討する企業が増えても不思議ではない。巨大市場を占有する日本企業も戦略の練り直しが求められる可能性がある。