自動車、二輪の販売に急ブレーキ

 需要の落ち込みが、各社の決断を後押ししたとみられる。2013年に同国での自動車販売は120万台を突破。その数は過去10年で3倍に膨らんでいる。しかし、好調な時期は長く続かなかった。2014年に横ばいとなり、2015年には前年比16.1%のマイナスに転じてしまったのだ。中間層への登竜門として象徴的な存在であった二輪車も2015年には648万台と前年比約18%減った。

 ある自動車部品メーカーの社長が、工場の裏に広がる原っぱを見ながら自嘲気味に語る。

 「進出当時の計画では、あそこに第2工場を既に建てているはずだった。そのつもりで最初から土地を確保したが、今の工場ですらまだ機械を入れるスペースが余っているのが実情だ。倉庫でも立てて貸そうかな。そうしたら少しは儲かるから…」

 この工場では、かつては従業員に残業を頼んだり、新たな従業員の確保に奔走したりするなど、高まる需要に対応するのがやっとだった。それが昨年から一気に生産調整をするようになった。別の部品工場では従業員を一斉に解雇したところもあるという。

 インドネシアが過去10年で豊かになったのは間違いない。インドネシアは1人当たり名目GDPが2005年には1404ドル(約16万円)だったが、2015年には3416ドル(推計値)と10年で2.4倍になるなど、急成長を遂げた。自動車の生産拠点が集まるジャカルタ近郊のカラワン地区では、2016年の最低賃金は6年前比で5倍と急騰している。

 2010年代に入り6%台と高いGDP(国内総生産)成長率を維持してきたインドネシアだが、2015年は4.79%と、6年ぶりに5%を切った。滞っていたインフラ整備など公共投資が進み始めたこともあり、2015年10~12月期では5.04%と復調傾向は示している。

 それでも内需に力強さがない一因として、高いインフレ率がある。2012年通年の消費者物価指数(CPI)の上昇率は3.98%だったが、2013年は6.41%、2014年は6.39%と上昇。2014年11月、財政負担の削減を目的に政府がガソリンの補助金を撤廃。これによってガソリン価格が3割以上上昇するなどして2015年は、8月までは7%台と高いCPI上昇率だった。その後は原油価格の下落もあって、2015年は年率で3.35%の上昇と、落ち着きは取り戻している。

 それでも、現地の若者は「3年で倍近くまで値上がりした食品もあり、クルマなど買う余裕がない」と自動車購入をためらう。

 成長鈍化が顕著になるなかで、外資系製造業などの生産縮小や撤退も相次いでいる。このためインドネシアの失業率は昨年11月時点で6.18%と、過去2年では最悪を記録。高額な買い物を控える意識が広がっている。