

4年前からガーナに駐在する、ある日系企業の駐在員。昨年夏ころから、週末の食卓に異変が起きている。「鍋料理に使う野菜をどうしようか」。家族で頭を悩ませる。理由は、具材に使う輸入野菜の高騰だ。東京なら1玉200円程度の白菜が、ガーナでは現地通貨で約50セディ(約1500円)もする。
キャベツ、ブロッコリーなど輸入野菜はいずれも、赴任した当時の約3倍に高騰した。理由は、下がり続けるガーナ通貨、セディの影響だ。対ドルレートは2013年に比べて、半値以下になった。この結果、輸入品価格は軒並み急上昇している。
現在は値上がりは国内産品にまで広がっている。そのきっかけが、2015年末に政府が決めた増税策だ。2016年1月から、石油製品に対する課税額を上げる措置を決め、石油製品の価格は18〜27%と上昇した。苦しい国家財政を、政府が少しでも補てんするのが狙いだ。
急上昇したガソリン価格の影響を受け、公共交通機関も年初から次々と運賃引き上げを決めた。輸送コストが増えた結果、その増加分を商品価格に転嫁する小売店が急増している。
世界的な原油安にもかかわらず、ガーナは逆に石油製品価格が上昇するという考えられない事態が起きている。「アフリカの中でも比較的穏健なガーナ国民だから我慢しているが、他のアフリカの国ならば、とっくに暴動が起きている」と、ガーナに拠点を置く日本企業の担当者は言う。
トランシーバーのような巨大スマホがバカ売れ
ガーナの首都アクラなどでは今、中国製のトランシーバーのような巨大なスマートフォンが売れている。謳い文句は「1度の充電で1週間の連続使用が可能」。その理由は、ガーナの主要都市で続く、慢性的な電力不足だ。政府は電力対策のため、12時間通電、その後24時間停電するという計画停電を繰り返している。
ガーナでは、2007年にガーナ沖で石油鉱床が発見され、2010年から原油生産が始まり、アフリカの新興産油国の仲間入りを果たす。金、カカオ豆、木材が代表的な輸出品目だったガーナでは、その後原油が突出するようになった。
資源ブームに踊ったガーナは、調達した資金を、インフラに対する新規投資やメンテナンスに回さず、公務員の給料引き上げやエネルギー補助金の引き上げに浪費した。そのツケの一端が、電力不足問題となって、ガーナ全体を蝕みつつある。
IMF(国際通貨基金)や先進国などからのODA(政府開発援助)に頼らず、自力で財政管理をするために、ユーロ建ての国債も発行。旺盛な海外投資家と資源ブームの追い風に乗り、これまでに37億5000万ドルを調達した。しかし、原油価格の下落と中国失速に伴う資源価格の低迷により、宴は瞬く間に終わる。
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