ペトロブラスの幹部は水増しした請負契約を建設会社などと結び賄賂を要求、その資金が政界に流れたと言われている。これまでに与野党の大物やペトロブラス幹部、建設会社幹部などが逮捕された。ルセフ大統領の支持率は10%前後に低迷。議会との対立も深く、政策遂行能力の低下が著しい。

 汚職規模は190億レアルと報じられたこともあったが、原子力発電公社や金融機関に飛び火していることを考えると、とてもそんな規模では収まらないだろう。汚職事件の影響でペトロブラスの資源開発プロジェクトも停滞、設備投資の大幅な減少が景気低迷を一段と深刻にしている。

 景気悪化に伴って、改善しつつあった治安も再び悪化。レストランに押し入った強盗が客の金品を奪って逃げるなど、サンパウロでは映画のワンシーンのような光景が繰り広げられている。

 2014年にFIFAワールドカップ、2016年夏にリオデジャネイロ五輪と世界的な大イベントが相次いでいるのにもかかわらず、目を覆わんばかりの惨状である。

ブラジルではコカインの一種であるクラック中毒が社会問題になっている。奥に見える黒テントの内部ではクラックの取引や吸引で盛り上がっている
ブラジルではコカインの一種であるクラック中毒が社会問題になっている。奥に見える黒テントの内部ではクラックの取引や吸引で盛り上がっている

ブラジルの転落は「自業自得」との声

 それにしても、なぜ坂道を転がり落ちるように転落してしまったのか。中国の減速が引き金を引いたことは間違いないが、それだけではない。「ブラジルの経済状況を説明する重要な要素は中国などの外的要因よりも国内要因、すなわちブラジル自身の問題だ」。米コロンビア大学・新興市場研究センターのマルコス・トロイホ所長はこう指摘する。

 事実、ブラジルは資源高で成長を享受していた当時から深刻な課題を抱えていた。その典型が、いわゆる「ブラジルコスト」。複雑な税制や過剰な労働者保護、貧弱なインフラに伴う物流コスト、治安対策にかかるコストなど、ブラジルの経済成長を阻害している様々な非効率のことだ。

税金支払いに要する時間は年2600時間

 税制で言えば、ブラジルには輸入税や所得税、工業製品税などの連邦税のほか、付加価値税の一種である商品流通サービス税(州税)、サ―ビス税(市税)などがある。その体系は複雑で、世界銀行によれば、税金支払いにかかる時間は年2600時間と調査対象となっている189カ国・地域の中で最下位。税負担も重く、税負担はGDP比で36%を占める。

 「ブラジルの税制はまるでパズル。税関連だけで7人の専門家を置いている」。ブラジルにおける醤油のシェアでトップを誇るサクラ中矢食品のロベルト・オハラ・バイスプレジデントはこう語る。複雑な税制は企業経営者の悩みの種だ。

 雇用・労働面にしても、1930年代に制定された時代遅れの労働法で労働者は過度に守られている。給与を引き下げることができないということに加えて、一度与えた便益(食券の配布、出張の日当、基礎食料品の配布など)も取りやめることができず、仮に会社が従業員にとって不利益となる変更に踏み切った場合、労働者は会社を訴えることが可能だ。

 ビジネスにおけるこういった非効率の数々が、ブラジルの成長を妨げている面は否めない。

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