数千の衣料品問屋がひしめくサンパウロ・ブラス地区。かき入れ時の11~12月には、サンパウロ周辺や内陸部から大型バスで買い付けに来るバイヤーでごった返す。ところが、11月末に訪れると、賑わっているはずのブラス地区では閑古鳥が鳴いていた。

自動車販売台数は2007年の水準に逆戻り

 例えば、女性用デニムパンツの専門店。朝6時に店を開けたが、3時間たっても一人も客が来ていないという。「今年の初めと比べると、一日の売り上げは4割落ちた。ここ数年は売り上げが毎年減っていたが、今年の落ち込みはひどい」。店番をしていた女性はあきらめ顔でこう語る。

「一日の売上高が4割落ちた」と語るデニムパンツ店の女性は語った
「一日の売上高が4割落ちた」と語るデニムパンツ店の女性は語った
閑古鳥が鳴くサンパウロ・ブラス地区。「ALUGA(貸します)」という看板が目立つ
閑古鳥が鳴くサンパウロ・ブラス地区。「ALUGA(貸します)」という看板が目立つ
サンパウロ一の目抜き通り、パウリスタ通り周辺の高級マンションもこの有様。「VENDE-SE」は「ここ売ります」の意味
サンパウロ一の目抜き通り、パウリスタ通り周辺の高級マンションもこの有様。「VENDE-SE」は「ここ売ります」の意味

 30年以上マネキンを売っているという女性も、「長くこの商売をやっているが、今年は最悪。来年も悪ければ、店を閉めるかもしれない」と打ち明ける。ブラジルは1980年代後半から90年代初頭にかけて、年率5ケタに達するハイパーインフレを経験した。その時代よりも悪いと語るところに、深刻さがうかがえる。

 自動車販売台数はピークの2012年に380万台に達したが、2015年には前年比27%減の約257万台と2007年の水準まで落ち込んだ。消費の縮小は日本企業にも打撃を与えており、キリンホールディングスは2015年12月期にブラジル事業の低迷を受けて1140億円の減損を実施、1949年の上場以来初の最終赤字に転落した。

深刻な不況下でも公共投資に打つ手なし!

 ブラジルは賃下げが難しいため、景気低迷が長引けば失業率が上がる。そうなれば、個人消費のさらなる減少は必至だ。

 そうなると頼みの綱は政府による需要喚起だが、憲法レベルで規定された義務的経費の比率は80%と高く、労働党政権の目玉である貧困対策にもブレーキがかからない。不況が深刻化する中での緊縮財政は自殺行為だが、さらなる財政の悪化はレアル安やインフレに拍車がかかるため、公共投資などを減らさざるを得ないのが現状だ。

 加えて、国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職事件もブラジルの混乱に拍車をかける。

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