仮想現実の発展で食は豊かになるのか

小竹:仮想現実(VR)の技術で、食事シーンの再現がどこでも可能になると言われていますが、その豊かを知る原体験がなければ意味がないのだろうと私は思っています。

 高取さんが描く、おいしさの未来とはどういうものですか。今後、どんな進化を遂げると、食卓は豊かになるでしょう。

高取:最近、調理のプロだけでなく、生産者によくお会いしていて感じるのは、野菜が本来持っている力の素晴らしさです。

 野菜は生き物なので、その土地の土壌や空気、水をそのまま反映して、個性的な味を持つのが自然な姿なのだと改めて驚かされるんです。

 これまでの食の流通では、均一化・規格化が優先され、野菜本来の持つ個性を削ぎ落としていくことが奨励されてきましたが、これからはその個性を取り戻して生かしていく食卓を目指すべきではないかなと感じています。

小竹:なるほど。素材の本来の味をより生かす食体験ですね。きっと食べ方の提案がもっと必要になりますね。

高取:おっしゃる通りで、それは我々がもっと努力をしなければいけない部分です。

 例えば、酢の使い方一つにしても、もっと提案はできるはずです。古代の文献にも、人類は1000年前からキャベツと酢を合わせて食べていたという記録があるほど、酢は身近な調味料です。ですから使い方の知恵は、もっと深められる余地があります。

 例えば、プロは“隠し酢”といって、おいしさを引き立てるための下味に酢を使ったりします。そういった情報の発信も積極的にしていけたらいいですね。

小竹:「おいしさへのこだわりを取り戻そう」という企業姿勢に、とても共感できました。これからも注目しています。そしてこれからもおいしいお店の情報交換お願いします(笑)。

小竹メモ

消費者の声に耳を傾け、寄り添いながら、「本当においしいお料理とは何か、どうあるべきか」とあるべき姿を愚直に追い求める企業の姿勢が印象的でした。これからは企業が、食卓のありようを提案していく時代です。そして、その中にとても重要なヒントがあるはずです。今回の対談を通して、そう改めて感じた人は多いのではないでしょうか。