2週間、調味料なしで暮らせるか?

小竹:実は私がこれまでだし調味料が苦手だったのは、味が濃すぎて煮物が全部同じ味になっちゃうのが嫌だったんです。

 素材の味を引き立てる配慮があるのなら、それぞれの野菜特有の味を楽しめそうですね。

高取:調味料ではなく、献立の主役である食材を味わう、という前提を大切にしたいですよね。

 私が味覚のトレーニングとして勧めているのは、「一切調味料を使わずに、2週間食事をする」というものです。塩も醤油も使わずに食事をすると、本当にその食材そのものの味が分かるようになるんです。

小竹:濃い味に慣れすぎている味覚をリセットするんですね。

高取:食は慣れであり、おいしさは比較だと思うので、味覚の偏りをなくす意識は持ちたいと思っています。いわゆる高級店の味ばかりがハイレベルなおいしさとは限らず、B級店も研究していますよ。

 星付きの店主が「高取さん、あの店の天丼食べたか。500円で、あの狭い厨房で、あの揚げ方。ちょっとすごいよ」と教えてくれることもあります。

 1万円出して美味しいのは当たり前。おいしさをいかにより広い層に広げていけるかが、私たちのミッションでもあると思っています。

小竹:味覚のレベルが高い人とそうではない人の差はどこにあると思いますか。

高取:私は経験の差ではないかなと思います。やはり経験の延長でしか、理想は描けないと思いますので。

小竹:確かにそうかもしれませんね。

 以前、栄養士の方と一緒に、子どもたちに「理想の食事」を絵に描いてもらうワークショップを開いたことがあるのですが、子どもたちが描いた絵に、普段の食体験が如実に現れたんです。

 日頃から食体験が豊かな子どもが描く絵は、家族団らんで、献立の品数も多いのに対し、孤食傾向のある子どもが描く絵は、カップラーメンに卵を落としただけの食事が「理想の食事」だったりして。

 まさに経験の延長にしか理想は描けないのだと、目の当たりにしました。

高取:食体験というのは、味だけでなく、誰とどういう気持ちで食べたかという総合的な体験で豊かさが決まるものなのでしょうね。きっと大げさなイベントでなくても、ささやかな楽しさで十分に豊かさは感じられる。