プロの厨房で“語学留学”

小竹:“修業”とはどんなことをしているのでしょうか。

高取:皿洗いです。要は、プロと一緒に厨房に立って、プロの会話を聞く。昼休みには一緒に賄いを食べて、どんな味をどんな言葉でプロが表現しているのか、注意深く聞く。

 例えば「これは甘いね」と言った時に、必ずしも砂糖が多いという意味ではないことがあります。「旨味が強い」場合もあるし、「脂の味がする」という意味で「甘い」が使われることもある。そういう微妙な感覚を知るのが大事なんです。

 味覚に関する語彙を増やしていく“語学留学”ですね。

 一方で、我々の研究室でしか使われない独特の研究言葉もあるわけです。

  

 料理のプロが使う言葉と研究室で使われる言葉をつなげていく、翻訳家のようなスキルを身につけるためにやっています。

 

 同時に、完成された料理を食べるだけでは気づかない、細やかな作り手の工夫を間近で見ることで、「おいしさの追求にはこれだけの努力を要するんだ」と肌で感じる経験も、開発の姿勢に影響するものだと思っています。

  

若手だけでなく、当社のものづくりのトップにも来てもらっています。やはり組織の上層のレベルを上げていくことで、下も付いていくはずなので。

   

小竹:既に出来上がった商品をプロに持ち込んで試しに使ってもらう、といったリサーチはよく聞きますが、そこまで中に入り込むのは、かなりの本気度を感じます。プロの料理人の方の中には、気難しい方もいらっしゃると想像しますが。

高取:結構、好意的に受け入れていただけるんですよ。「大きな会社がそういう姿勢を持つのはいいことだね。応援しているよ」と。一方で、それだけ影響力もあるのだと自覚して、気が引き締まります。

(後編に続く)