料理を通じて、新しいものへの好奇心が目覚める

小竹:献立表を見ると、和・洋・中、本当に多彩です。私も食べてみたいと思うものばかりですね。特に喜ばれる献立の傾向はありますか。

神永:高級食材や珍しい食材を使った献立、季節の献立ももちろんですが、若い人に好まれるトレンドメニューも人気です。「パンケーキ」や「ロコモコ」、「タルトタタン」をつくってみて、「こういうものなのね」と知るのが楽しいそうです。お孫さんとの話題にもなります。

小竹:確かに、食は全世代共通の話題になります。

神永:以前、フレッシュネスバーガーとのコラボで、ハンバーガーづくりを試みたことがあるのですが、「ハンバーガーを初めて食べた」という人が多くて盛り上がりました。食べ方が分からず、バンズをはがして食べる人もいらしたり(笑)。

 料理ではありませんが、ここに来て初めて電子レンジの使い方を覚えた人もいます。昔ながらの銀色の包丁を使い慣れた世代には、セラミック製の白い包丁のような、今風の道具を使うのも新鮮で楽しいようです。

小竹:料理を通じて、新しいものへの好奇心がどんどん刺激されていくんですね。いい意味で予想を大きく裏切られたのが、高齢者向けの料理教室というと、「煮物のおさらい」のような、かつてつくっていたなつかしの献立が、ラインアップの中心なのかと思っていました。けれど、実際はその逆だった。献立表に、インスタ好きの若者の間で流行っている「ガトーインビジブル」まであったので驚きました。やはり、人はいくつになっても新しいインプットを楽しみたいもので、その刺激によって失いかけた機能も取り戻していくのだ、と。そして、その過程で“料理”が貢献できる部分はとても大きいのだと、再認識できました。

神永:料理の楽しみの可能性は無限だなと、私も感じています。

小竹:今後、さらに広げていきたい目標はありますか。

神永:介護保険を使わなくても生活できている元気なシニアに向けた料理教室も、ぜひやってみたいですね。当社では、お子さんとシニアが一緒に参加できる料理教室も開催しているのですが、そちらもすごく人気です。

小竹:神永さんが熱意を持って取り組んでいるのが印象的なのですが、事業にかける原動力は何でしょう。

神永:介護の専門職ではないからこそ、いい意味で常識を超えるものをつくっていきたいという思いはあります。デイサービスの事業所って、どちらかというと地味な印象が一般的だったと思います。けれど、もっと明るく、華やかであっていい。楽しみをもたらすものであっていい。

 利用者が自慢したくなる場所、心から楽しいと思える場所を目指しています。そういう利用者の姿が見えると、スタッフも前向きに仕事に取り組めます。おかげさまで、うちは滅多に人が辞めないんです。

小竹:まさに、デイサービスと料理教室の進化系ですね。食の可能性をとても感じられて将来が楽しみになりました。

小竹メモ

 自分の体が元気になっていく実感だけではなくて、家族の役に⽴てる実感。料理を通じて過去の記憶を蘇らせ、さらなる新しいものへの興味を持っていく。作業を通して人が元気になるという料理の効用は、決して高齢者だけに限ったものではないはずです。このスタジオでは、それがしっかりと証明されていました。高齢者の方々が、笑顔で料理をする様子を見ていると、思わず涙が出そうになりました。