要介護5から2になった女性も?

小竹:先ほどの要介護5から2になった女性のような事例は説得力があると思います。

神永:あの方は、ダンスを始めるほどに、行動が積極的になったんです。その変わりように、息子さんが感動して「家を改装する時、ここと同じようなキッチンをつくりたい」と相談に来られたくらいです。

小竹:それはすごいですね。利用者さんは、機能訓練上で目標は設定しているのでしょうか。

神永:はい。利用開始のタイミングでご家族と相談しながら、最終的にどこまでできるようになりたいかというゴールを定めて、中期目標、短期目標と設定し、参加の度に達成度をチェックしています。

 例えば、「料理を1品作れるようになる」「冷蔵庫の管理をできるようになる」「お客さまにお茶を淹れられるようになる」といった、具体的な行動に落とし込んだ目標です。開始時にはご自宅にうかがって、普段の台所も見させていただいています。冷蔵庫を見ると、大体、普段の食生活の状況が分かりますから。

小竹:キッチンもご覧になるんですか。

神永:古い家に長く住んでいる場合、台所はたいてい日当たりの良くない奥に配置されています。手元が暗くて見えづらいから料理をする気が起きない、という人は少なくありません。スタジオでは、自然光と照明で明るい空間なので、料理をする気になる、という声も聞きました。

小竹:環境は大事ですね。料理ができる場所を取り戻すことで、自分らしさも取り戻している人も多いのではないでしょうか。クックパッドを運営して実感するのは、特に女性の場合、料理が自己表現の手段になっているということです。料理を通じて自分を表現して、それを家族や友人から承認されることが大きな喜びになる。逆に、心の病気のサインとして、「料理をしなくなる」という変化が出ることも多いと聞きます。やはり料理は精神面と深く関わるものなのですね。

神永:それはとてもあると思います。

小竹:年齢層でいうと、何歳くらいまでこちらに来ていますか。

神永:一番若い人で、くも膜下出血で障害が残った45歳の人。最高齢は96歳です。

小竹:講師はシェフと管理栄養士の人が担っている、と。特別な訓練を受けているのでしょうか。

神永:特に受けていません。ほかに機能訓練指導員の資格を持っている看護師が調理中に回っています。ただし、できるだけ「手を貸さない」ことが大事なんです。

 料理の説明は極力、言葉で済ませるようにして、利用者が自分の手を動かす機会を増やしています。先回りしてケアしすぎる過介護は、自立支援の妨げになってしまいます。時間がかかってもいいので自分で挑戦してもらうようにしています。

 そして、やっていただいたことに対しては、「ありがとうございます」「助かりました」と感謝を伝えています。人の役に立っている実感を持つことが、「もっとできるようになろう」というモチベーションを高めると思っています。