大人にとっての「給食」を作りたかった

橋本:素直に栄養士さんに聞いたんです。「何の数値を基準にしたらいいですか」って。

 そしたら、「書店の奥に行って、管理栄養士の資格を目指す人が読むテキストを参考にするといいですよ。エビデンスのきちんとした一番ベーシックな数字が載っているから」と教えてくれました。そして、その通りにしたのです。

 具体的に言うと、日本人の食事摂取基準の推奨量以上・取りすぎ以下になるように栄養価を調整しています。「BASE PASTA」の「BASE」には、「ベーシックな知識」という意味も込めています。

小竹:なるほど。ビビッドに「ビタミン○倍」ということは、あえて目指さないわけですね。

橋本:目指しません。はやりの機能性を打ち出すことも考えていません。やはり義務的な入り口にはしたくないからです。

 僕の思いとしては、子どもの頃の給食の恩恵を、大人にも受けてもらいたいんです。子どもは義務教育で通う学校の給食で、平日の1日1回、月にして20回、栄養バランスの取れた昼食を食べて最低限の栄養を維持しています。家庭の経済環境などの影響を受けず、栄養のベースを維持できる給食というシステムは、素晴らしいと思いませんか。

 大人の食事でも、月90食のうち20食くらいは、この「BASE PASTA」を活用してワンプレートメニューにしてもらえると、給食と同じ頻度になるのでいいんじゃないかと思っています。

 基礎栄養の確保は、大事な社会保障になるのではないかと僕は思います。栄養学の先生がよくおっしゃるのは、最近の企業は機能性食品の開発に傾いていて、本来、一番大事にしなければならない基礎栄養学の研究が、発展しづらい環境になりつつあるそうです。

 最近、工学分野では「やはり基礎研究が重要だ」と、基礎が見直される流れになっていますが、同じようなことが栄養学の分野でも起きているようです。

小竹:大事な視点ですね。一方で、より手軽な形状で「必要な栄養をすべて入れました」という食品や飲料も誕生していますが、それはどう見ていますか。

橋本:僕は、「食べる楽しみや喜び」を失いたくないと思っています。僕も、飲料タイプの完全栄養食を試してみましたが、続きませんでした。もともと、スナックやゼリーを昼食代わりにした日は、午後のパフォーマンスが落ちるなという実感がありました。

 仕事を優先して食事の時間を短縮したつもりだったけれど、肝心の仕事の生産性が上がらなかった。やはり「ご飯を楽しみに午前の仕事を頑張って、おいしいご飯を食べたから午後の仕事も頑張る」という感覚ってあると思うんです。だから原材料にもこだわって、ちゃんと「おいしいパスタ」を作ろうと思いました。

小竹:橋本さんは食を楽しむタイプなんですね。

橋本:そうですね。朝ご飯も欠かさず食べますし、目玉焼きやベーコンを楽しみにしながら目覚めるタイプです(笑)。ですから、「BASE PASTA」は、食いしん坊な僕のために作った完全栄養食だと思っていただいてもいいです。

小竹:「自分のために」というのは強い動機になると思います。

父や母、妹が食べてくれるか

橋本:あと、家族が食べたいと思ってくれるかと常に自分に問いかけています。健康な人を増やすには、色々な年齢層に響かないといけない。ですから僕の父、母、妹が食べているイメージが湧くかどうかを大事にしました。

 例えば、料理好きな母に、「今日はたまには休んだら。これがあるんだから」と薦められるかどうか。チャーハン好きな父に、「これもうまいよ」と薦められるかどうか。

小竹:お話を聞いていると、橋本さんの原体験は、豊かな食卓のある家庭に育ったことのようですね。いかがでしょうか。

橋本:僕の母は、いつもきちんと考えて料理を作ってくれるタイプでした。おいしかったですし、僕が受験前にお腹を壊した時は、胃腸に優しい和食を中心にしてくれたりと、家族の健康や体調をしっかり管理しながら料理を作っていたと思います。今思えば、とても恵まれた食環境だったのでしょうね(後編に続く)。