スペックではなく、シーンから商品イメージを固めていく

木下:実は、「電子レンジは見せたくないから布を掛けています」という人が少なくありません。それを変えるべく、新しい提案をしたつもりです。

小竹:これも、何かカギとなるイメージがあったのでしょうか。

木下:高原の山奥にあるレストランを訪ねた時のワクワク感です。オレンジ色の壁で、赤と白のチェックのあしらいで飾られていて、ドアを開けるとカランカランとベルが鳴って……。席に案内されて、メニューを見ている時の期待感。そういうイメージが先にあって組み立てているので、スペックから作る製品とは、かなりスタンスが違うと思います。

小竹:確かに、スペックの面ではこれから色々と改良されるんだろうなと思いました(笑)。

木下:おっしゃるとおりです。実は私たちも製品作りはスペック優先なのだと思っていたのですが、今回のオーブンレンジを出してみて分かったのは、スペック以外でもお客様に訴えられることはありそうだということです。

小竹:機能がシンプルで、子どもでも感覚的に使える点はすごくいいですね。最近主流のハイスペックなオーブンレンジは、やたらボタンが多くて操作が複雑で、「このボタン、何だっけ?」ということがよくあります。

 その点、バルミューダのオーブンレンジは、庫内のトレーが1つしかなくて、最初は「あれ? 1個しかないの?」と違和感を覚えました。けれど、使ってみると片付けがラクだったりする。

 潔く機能を削ぎ落とした点も好感を持てました。全体的な印象としては、「レンジを使う時間を楽しくしよう!」というメッセージがまっすぐ伝わってくるので、心地良かったんです。

 こうしたポイントは、女性目線だと案外、気付きにくい点だったかもしれないと思いました。よく家電メーカーの新商品発表会に行くと、「女性の開発者が主婦の目線で作りました」とアピールされます。

 けれど、既存ユーザーの女性の困り事を解消するだけでは、新しい領域を開拓できません。むしろ男性に支持されるような斬新な提案をした製品の方が、伸びしろがあると思いました。

木下:課題解決というよりも、新しい豊かさを提案していきたいと思っています。

小竹:今の20代から30代の夫婦は、一緒に料理するのも当たり前。女性だけがキッチンに立つ時代は、おそらくあと数年で終わるのではないかと思っています。男性に選ばれる調理家電の存在感は、ますます高まっていくでしょうね。

木下:料理って本来すごくクリエーティブで、会話を生むものです。そのコミュニケーションの中に、トースターやレンジは入っていけるんじゃないかと思っています。

小竹:これまで男性が料理するシーンといえば、「イベントで塊肉を焼く」「週末にスパイス十数種を使ってカレーを作る」といった“非日常”でした。けれど最近のSNS(交流サイト)の投稿を見ていると、“日常”の料理を自然体で楽しんでいる男性の投稿が、確実に増えています。

木下:トーストがインスタ映えしやすい素材であったことも、「誰かに見せたくなる」心理にフィットしたのかもしれません。

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小竹:付属のレシピ集もオシャレに作ってありますね。

木下:全て社内で制作しているのですが、あまり奇をてらわないように気を付けています。とんがったオシャレな雰囲気を意識しすぎて、「イチジクとピンクペッパーを用意して……」というレシピだらけになるのは違うな、と。多くの人の日常になじむ点は大事にしていこうとしています。

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