「自分たちが口にするものは自分たちで作ろう」

芹澤:僕たちの目指すビジョンは、個人の「食べること」と「作ること」がつながった、サステナブルな社会を取り戻すことです。もともと人類は、「食べたら作って、また食べる」というサイクルを繰り返して生活をしていたわけですが、近代化の中で食品が工業品化し、誰が作ったか分からない食品を店頭で買って食べる、という生活が当たり前になりました。

 欧米では、10年ほど前から「Social grow your own」という価値観が台頭してきて、「自分たちが口にするものは自分たちで作ろう」というアクションが広がっていったのですが、日本ではまだ“人任せ”の食の消費が圧倒的です。けれどずっと昔にさかのぼると、農耕民族だった日本人は皆、自分の手が届く場所で野菜や穀類を育てて、隣人と分け合うような暮らしをしていたんです。いつの間にかその文化が失われて、ここまで来ているわけです。

 自分の住む場所から遠く離れたどこかの広い農地で大量に生産された野菜が流通網に乗って、たくさんの家庭の食卓に並ぶ。いわば大規模・中央集権型のシステムで今の社会は回っています。僕はそれ自体を否定するつもりはありません。

 けれど、もっと身近な場所でみんなが野菜を育てることを楽しめたら、社会のいろんな問題が解決できるんじゃないか。そういう思いで事業を始めました。

 サービス内容は大きく二つあります。一つは農体験を身近にする無料アプリの提供。もう一つは、誰でも野菜作りを楽しめるIoT(モノのインターネット)を搭載した新型プランターの提供です。

小竹:私は家庭菜園をすごくやってきたタイプではありませんが、「近くで採れた野菜は新鮮でおいしい」という実感はあります。有機野菜を宅配で買うものいいけれど、近所のファーマーズマーケットで買う方が、より自然な流通のあり方だとも感じています。だからといって、食卓に並べる野菜をすべて自力で作れるかというとやはり難しい。だから、プランティオのサービスに期待しています。それぞれ、もう少し詳しく聞かせてください。

芹澤:まず、無料アプリの方は「Uber」や「Airbnb」のように位置情報を活用して、食を楽しむ体験をリアルタイム検索できるサービスをメーンにしています。例えば、「今日の15時から恵比寿で、大豆を持ち寄って味噌を作るワークショップが開催予定」というふうに。フォローしているコミュニティの仲間同士で情報を交換したり、イベントを立ち上げたりできる機能を考えています。

 特徴的なのは、「ストーリー」という機能で、“野菜を知る楽しみ”と連動して、農体験につなげていく仕組みです。まるで小説を読むような感覚で、野菜の語源やトリビアを学びながら、実際に育てていく。ゲーミフィケーションの要素を取り入れているんです。

飲食店と連携して「野菜を育てる」?

芹澤:飲食店とも連携していきます。どう連携するかというと、野菜を栽培できるボックスを店頭に置いてもらって、「食べると作るをつなげる」体験に誘導してもらいます。

 例えば、イタリアンレストランでバジルソースのパスタを食べたお客さんに、「この料理に使ったバジル、自宅でも栽培できるんですよ。よかったら育ててみてください」と栽培ボックスをお渡しする。ボックスの外装にはQRコードが付いていて、読み込むとアプリがダウンロードでき、先述の「ストーリー」を見ながら初心者でも栽培を始められる。

 お店もコミュニティに入っていて、「ランチ始めました」といった告知が出せたりして、リピーターの定着につなげられるメリットがあります。

 さらに野菜を育てることでポイントを貯められる仕組みもつくります。ポイントが貯まったら次の種に変えられて、また野菜の栽培ができる。究極的には、育て続けると野菜を買うお金が要らなくなることを目指します。

小竹:新しいですね。

芹澤:これには、「野菜は自然のギフトであり、お金で買うものではない」という思いを込めています。野菜を育てる行為の中にあった労力をポイントとして可視化して貯めることで、次の食につなげていくところまで設計したかったんです。

小竹:なるほど。こちらが「スマートプランター」の実物ですね。初めて見ました。

芹澤:はい。本邦初公開です。というか、まだプロトタイプです。まだテーピングで補整している箇所とか、いろいろ見えちゃっていますが、ご勘弁ください(笑)。