野菜、生肉、鮮魚だって気象次第で売れ筋が変わる

小竹:こうした取り組みを広げるには、まず経営側が俯瞰して問題を解決しようという意識が必要ですね。小売りの立場だと、毎日の売り上げをいかに上げるかに一生懸命で、なかなかフードロスの問題まで気が回らないのが現実です。海外では、食品流通での気象データの活用は進んでいるのでしょうか。

吉開:米国では大手スーパーが独自に技術を開発して導入しているようです。日本ではまだそれほど資本投入されていないのが現状ですし、地方の個人経営のスーパーなどでは難しいとも思います。だからこそ我々は、業界関係者が広く活用しやすい汎用性の高いデータを作っていかなくてはならない。

小竹:気候変動は世界的にも問題になっていて、2017年の夏も例年より気温が上がらず、各社が苦戦したと聞きます。これから気象予測データが果たす役割は大きくなるでしょうね。

吉開:あくまで補助的な役割かもしれませんが、フードロスを減らすことに貢献していきたいですね。ミツカンの導入例では、季節商品である「冷やし中華つゆ」の季節終盤の売れ残りがそのままロスになるという課題がありました。

 そこで、SNS(交流サイト)を活用した「体感気温指標」を独自に開発し、3カ月先までの週別気温予測と需要予測情報を提供しました。その結果、季節終盤の売上予測精度が向上して、最終在庫(ロス)を前年比で20%も削減する結果を出すことができました。フードロスの削減以外にも、季節飲料の機会ロス回避や、海流予測に基づく運送コスト削減など、活用の可能性はいくらでも広がります。

小竹:生鮮食品にも応用できると、大きなイノベーションが起こりそうです。

(写真:竹井 俊晴)

吉開:ぜひチャレンジしたいですね。しかし野菜や肉、魚といった生鮮食品は、まだまだ流通データの整備が不十分で、連携しにくい問題があります。

小竹:それはよく聞かれる課題ですね。私はホクトというキノコの会社で社外取締役をしているのですが、商品流通の司令塔になるのは生鮮市場なので、その市場が気象データを活用できるようになると、全体のロス解消のきっかけになるのかとも思います。そうすれば、「今年は天候に恵まれなかったから売れなかったなぁ」なんて、売上実績を天気のせいにすることもなくなるはずです。

吉開:生鮮品に対して私たちができる取り組みとして、一つ取り組んでみたのは、ある期間の気温と売れ筋商品の解析です。「気温が変動しやすい春先の2~3月で、寒くなった日と温かくなった日で売れる肉に違いがあるのか」と調べたところ、「寒い日はしゃぶしゃぶ肉、温かい日は焼き肉用の肉が売れる」という結果が出ました。この結果をある店の棚割に活用していただいたところ、ほかの店舗に比べて10%売り上げが伸びたそうです。

(写真:竹井 俊晴)