1997年の創業から21年、日本の家庭の食卓文化をリードしてきた“フードテック”の老舗、クックパッド。その初期メンバーであり、現在も同社のブランディング部門を率いる小竹貴子氏が、気になるフードビジネスの新芽をピックアップし、現場を訪ねる。連載3回目は日本気象協会。気象情報というビッグデータを、フードロス問題の解決に活用する取り組みを始めている。食品メーカーなどを巻き込んだ挑戦が、成果を生み始めた。
(取材/2017年10月13日、構成/宮本恵理子)
小竹氏(以下、小竹):前回( 「大手食品メーカーが気象情報を販促に活用?」)は、気象のデータを、食品メーカーの販売動向などの情報と組み合わせて、フードロスを減らしたり、より有効な販促を提案したりしている、と説明されていました。具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。
吉開氏(以下、吉開):例えば相模屋食料の場合、日配品である豆腐の廃棄ロスを削減するために、豆腐の中でも気象の変化によって売り上げが変動しやすい種類を特定することから始めました。すると、冷奴に使われる寄せ豆腐や冬の料理に使われやすい厚揚げといった品目が、気温との相関関係が高そうだと分かりました。
それから、AI(人工知能)で抽出した気温や湿度、降水量、日射量などの気象データと、暦や特売タイミングなどの情報を組み合わせて、最大2週間先までの商品の売上予測情報を、5段階の「寄せ豆腐指数」として提供しました。
その結果、相模屋食料の発注量予測の精度が約30%向上し、廃棄量が30%削減されたのです。
小竹:今の話を聞いて安心したのが、単に「データを提供して終わり」ではなく、メーカー側と一緒にデータを活用する方法を育てていこうとしていることです。いくら高精度なデータがあっても、それを生かす仕組みを作れなければ意味がないですから。
吉開:そう思います。だからこそ時間はかかってしまうのですが(苦笑)。
この豆腐の例だと、相模屋食料グループの小売店も巻き込んで、メーカーと小売りが連動することで成果を出せました。豆腐の生産リードタイムは2日で、2日前に発注しなければ間に合わない。そこで業界の慣例として、前日の発注を基本に生産していたようなのです。
生産側は2日前から生産しないと間に合わないので「不足しないように」と多めに作ることになり、結果、ロスが生まれる。
けれど今回のように気象データを活用すれば、発注側も精度の高い需要予測が分かるので、2日前の発注も可能になったわけです。その結果、「オーダーされた分だけ作る」という、完全受注生産型が実現した。
これまでは8%ほどあった見込み誤差が、0.4%に圧縮され、メーカーも小売りもウィン―ウィンになるという成果につながりました。
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