野菜に対するニーズだって、多様化している

朝倉:我々も食品スーパーには大変お世話になっていますし、現在の流通の良さもある。けれど、現状は種屋さん、農家、流通、消費者という流れが分断されていて、本当に消費者のニーズに合った野菜を提供できていないのかもしれない、と思う部分もありますね。

 例えば、このスマイルボールは、小ぶりなサイズなのであまり喜ばれないのかと思いきや、「一人でサラダで食べ切るのにちょうどいい」とおっしゃる人もいたりします。世帯構成の変化とともに、野菜も、新しいサイズの選択肢を増やす提案もできるかもしれません。

 野菜の中で先行しているのはトマトで、スーパーに何種類もの品種が並んでいますよね。同じようにタマネギだって、複数の品種やサイズから選べると楽しいんじゃないでしょうか。

小竹:野菜売り場をもっと楽しくしたいですね。値段だけではなく、特徴を比較しながら買い物を楽しめるようになれば、食品スーパーも活性化するはずです。すぐに外食に売り込むのではなく、食卓に近い場所へのアプローチに目を向けるところが、ハウス食品らしいですね。今後、加工食品への応用は。

朝倉:もちろんやっていきたいですね。ただ、よく社内でも冗談で言い合うのですが、「これはカレーには向かないね」と(笑)。加熱したら通常のタマネギも十分に甘くりますからね。

 生で食べても辛くない特性を生かすなら、より生に近い状態の加工技術を高めて応用することで可能性が広がっていくはずです。結果、食品加工そのものの領域を広げるきっかけにもなり得ます。

小竹:面白いですね。“異例”と言われた新規事業が本業の領域も広げていく。

「インスタ映え」から野菜を楽しみ始めてもいい

朝倉:最近はコールドプレス加工の商品を「野菜代わり」に選ぶ人も増えています。つまり野菜の概念そのものが幅広くなってきている。開発や販売の仕方も当然、変わっていくべきだと思います。

小竹:特に若い層で、「生で野菜を食べたい」というニーズは高いようですね。

朝倉:インスタ映えする野菜が話題になったりするのを見ていると、最近の20~30代にとって「野菜を食べる自分はカッコいい」という感覚も、入り口になっているのではないかと感じます。

小竹:私はそれでもいいと思います。ファッションやコミュニケーションの一つとして野菜に触れた後、「あ、なんか体の調子がいいかも」と気づいてくれたらいい。スムージー然り、若い人の新しい価値観で生まれる食品もどんどん出てきていいと思います。

 「スマイルボール」という名前がまさにそうなのですが、野菜を食べることそのものがシンプルな楽しみになればいい。食品を消費者のニーズに近づける技術がこれからも生まれていくといいですね。

朝倉:生でタマネギを食べるレシピが増えるだけで、新たな日本の食文化をつくれるかもしれない。そんな大それたことを考えつつ、メーカーとしての新たな挑戦をしていきたいと思います。

【小竹メモ】

 食・料理のイノベーションではこれまで、いかに調理の手間を減らして時間を短縮するか、というものが中心でした。けれど調理を楽しむこと、時間をかけてでも使いたい、と思える製品の開発にシフトし始めている気がしています。今回の商品は、両方のいいとこどりだというのが、初めて見た時の感想でした。生活者の高い目線に立つ野菜は、これからたくさん生まれてきそうです。