1997年の創業から20年、日本の家庭の食卓文化をリードしてきた“フードテックの老舗”クックパッド。その初期メンバーであり、現在も同社のブランディング部門を率いる小竹貴子氏が、気になるフードビジネスの新芽を取り上げ、現場を訪ねる本連載。2回目の訪問先はハウス食品。「切っても涙が出ないタマネギ」を開発し、2015年から販売も始めている。食品メーカーが野菜作りに乗り出したきっかけと狙いは何か。

(取材/2017年10月20日、構成/宮本恵理子)

取材に応じてくれたのは、ハウス食品グループ本社新規事業開発部の朝倉健吾課長(写真内右)と同新規事業開発部の脇本友紀子氏(写真内中央、写真:竹井 俊晴、ほかも同じ)

小竹氏(以下、小竹):ハウス食品といえば、カレーやシチューなど、家庭の食卓でおなじみの加工食品メーカーの代表格です。そのハウス食品が、自分たちで野菜を作って販売し始めたと聞いて驚いたのが2015年秋のこと。それも、「切っても涙の出ない、丸かじりできるタマネギ」という、全く新しい切り口の商品です。

 2017年の販売分も好評だったと聞いています(注:2018年分は、10月頃から販売開始予定)。まずは、開発経緯から伺わせてください。

朝倉健吾氏(朝倉):注目していただいて嬉しいです。私たちが数量限定で販売するタマネギ「スマイルボール」は、独自の特許技術を用いた品種改良によって、タマネギの内部にある、涙を誘発する辛み成分を抑えて、タマネギ本来の甘みを楽しめるのが特徴です。

小竹:タマネギを調理する時につきものだった涙から解放されるなんて、画期的です。いただいてみると……ジューシーで、確かに甘みがありますね。

 私はいつも、ポテトサラダにスライスしたタマネギを入れるのですが、これなら子どもたちも喜んで食べてくれそうです。これでドレッシングも作ってみたいですね。

朝倉:初めて食べると、皆さん驚きますね。キャッチコピーにも「リンゴみたいな、ほのかな甘さ」という表現を入れています。私たちも作ってみて初めて分かったのですが、“辛くないタマネギ”の開発は、業界が長年追い続けた夢だったようです。

小竹: ということは、そもそも狙って開発を進めた商品ではなかった、と。

ハウス食品が開発した辛くないタマネギ「ハウスボール」。見た目は普通のタマネギだが、涙を誘発する辛み成分を抑えて、タマネギ本来の甘みを楽しめる