今、料理が面白い。ユーザー投稿や動画を使ったレシピサービスが人気を集め、SNS(交流サイト)が火付け役となって、個性的な料理家が続々登場。さらに、高齢化が進む中、「シニア」「介護」といった分野での食の関心も高まっている。
この流れに早くから注目してきたのが、月間約6000万人が利用する日本最大の料理レシピサービス「クックパッド」の初期メンバーで、現在は同社でブランディング・広報部門の本部長として活躍する小竹貴子氏だ。
日々、家庭で食べる料理が、主婦の個人行動でしかなく家庭の中に閉じていた20年前から、「料理を楽しみたい」というユーザーの潜在ニーズを敏感に汲み取り、事業を拡大させてきた。そして今でも気になるキーパーソンには直接会い、体験し、料理を取り巻くトレンドにいち早く目を付ける。
「料理は日本が世界に勝てるコンテンツ」と語る小竹氏。本連載ではその小竹氏が、大企業からベンチャー、研究機関など、料理や食卓を取り巻く様々なプレーヤーに会いながら、「料理×ビジネスの最新形」を探る。
初回は小竹氏本人も日ごろから愛用している調理家電の分野から、パナソニック アプライアンス社が開発を進めているという「障害があっても、毎日の料理を楽しむことができる」という最新ケア家電の開発過程について、話を聞きに行った。
(取材/2017年9月12日、構成/宮本恵理子)

小竹氏(小竹):今日は、パナソニックで開発準備が進んでいるという「Delisofter(デリソフター)」という家電について、話を聞きにきました。
クックパッドは創業20年を迎えました。これまでも料理が社会に対してどんなインパクトを与えられるのか、その可能性を長く考えてきました。
最近は特に、深刻な高齢化を受けて、「介護」や「終末期」などといった場面で、食が果たせる役割について考える機会が増えてきます。現状、こうした介護の現場で先行しているのは、“食べる”という行為から楽しみを省いた流動食の技術です。
ただ実際、家庭での介護となると、すごく手間と時間をかけた料理を、誰もが調理できるわけではありません。これからさらに高齢化が進む中で、加齢や病気によって食べる機能が衰えた時に、誰でも簡単に、これまでと同じような食事を楽しむためのテクノロジーは生まれないのだろうか。そんな疑問を抱いていた時に、パナソニックの新規事業の一つとして開発が始まったという「デリソフター」の存在を知りました。
昨年のフードテックのイベント「スマート・キッチン サミット」(2017年8月開催)でプレゼンテーションを聞いて「これだ!」と胸が躍りました。改めて、「デリソフター」がどういうものなのか、まずは教えてください。
深田昌則氏(以下、深田):これはまだ世に出ていない商品で、試作段階なのですが、コンセプトとしては、高齢で発症することの多い「嚥下障害」の困り事を解決する狙いで開発しました。

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