「この数年で使用されるロボットの数は10~15%ほど伸びた。自動車業界が中心だが、中小の製造業がロボットの導入を始めている」

 自動化システムの業界団体、A3(Association for Advancing Automation)の代表、ジェフ・バーンスタイン氏は言う。

 ロボットを開発しているメーカーは先行きに自信を深める。

 人間と一緒に働く協働ロボットを開発しているRethink Robotics。16年に片腕ロボット「Sawyer」を投入したところ、想定以上の引き合いがあったため増産を決めた。「歴史的に自動化は一つの目的のためにカスタマイズされており、大企業以外は活用できなかった。だが、Sawyerは安全かつフレキシブルで、トレーニングも簡単。協働ロボットは労働力不足のギャップを埋める存在になる」。製品・マーケティング担当役員のジム・ロートン氏は語る。

 従来は自動化や省人化が難しかった業界でもロボットの導入が進みつつある。典型的な業界は物流だ。

 「物流センターの作業員は1日に最大12マイル(19.2km)も歩く」。物流センターでの自走型ロボットを開発しているシリコンバレーのベンチャー企業、Fetch Roboticsのマイケル・ファーガスンCTO(最高技術責任者)が語るように、倉庫の労働環境は過酷だが、eコマースの拡大とともに物流センターの数や取扱数量は激増している。倉庫の生産性向上は小売りや物流会社にとって深刻な問題だ。

Fetch Robotics Freight500 in action
『vimeo』動画より

 その中で米アマゾンは12年に倉庫の自動化を手がけていたKiva Systems(現Amazon Robotics)を買収、物流センターの自動化を加速している。カナダの物流コンサル会社、MWPVLの試算によると、Kivaの自動化システムの導入で20%の労働コストの削減につながるという。業界の自動化ニーズは強く、Fetchのようなベンチャーも続々と生まれている。

 将来的な期待の高い業界としてはトラック業界や農業も挙げられる。

 「トラックの中に押し込まれた生活で年収6万ドルなら、最低賃金のウォルマートで働く方がマシだよ」。トラックの自動運転と遠隔操作の技術開発を手がけるStarsky Roboticsの創業者、ステファン・セルツ・アクスマカー氏はこう語る。広大な米国大陸のこと、東海岸から西海岸に行って戻るまでに3週間は拘束される。それでいて、アクスマカーCEOが指摘するように年収は6万~9万ドルに過ぎない。

 農業も同様だ。カリフォルニア州で野菜や果物の収穫にあたっているのは多くの場合、不法移民だ。作業自体がハードな上に、トランプ大統領の移民政策で労働力の確保が難しくなりつつある。それだけにテクノロジーに対するニーズも強く、様々なスタートアップが研究開発に取り組んでいる。

 Blue River technologyはカメラでレタスの苗を瞬時に見極め、生育不良の苗や雑草にピンポイントで除草剤を散布する装置を開発した。ロボット関連のプロジェクトを数多く抱える非営利の研究機関、SRI Internationalでも、イチゴやリンゴを収穫するロボットの研究を進めている。

 「われわれは人間の生活を楽にするためのロボットを開発している。汚い仕事、辛い仕事を人間から解放することは社会にとって大きなベネフィットだ」。SRIでロボットの研究・開発を取り仕切るナヒド・シドキ・エグゼクティブディレクターは語る。

 ロボット開発が加速している背景には、企業サイドの強いニーズに加えてビジネスモデルの変化もある。これまでロボットメーカーは装置の販売で収益を上げていたが、クラウドビジネスなどと同様、利用時間や台数、利用量などに応じて課金するモデルに変わりつつあるのだ。「これだと初期の設備投資負担が軽く、状況に応じてビジネスを拡大できるため、ユーザーは自動化投資に踏み切りやすい」(シリコンバレーのロボットスタートアップで働くロボットエンジニアの河本和宏氏)

 労働力が増えないのであれば、生産性を高める以外に経済成長を実現する術はない。だが、米国では生産性の伸びが低迷しており、その部分も制約要因になっている。それが人手不足によって解消されるのであれば、トランプ政権にとっては嬉しい誤算だろう。もちろん、あらゆる業界でロボットが活用されるようになるにはもうしばらく時間がかかる。それでも、今の人材不足が開発を加速させるのは間違いない。「米国人の雇用創出」を訴えるトランプ大統領が求めるものとは違うと思うが。