国境税調整に注目が集まるのは、そこから得られる税収が10年間で1兆ドルと巨額なためだ。大規模減税、特に30年ぶりの法人税改革は共和党の悲願だが、同党は財政規律を重視するため、減税分の財源を確保しなければならない。その財源として、下院執行部は国境税調整に着目している。裏を返せば、国境税調整の導入がなければ、トランプ大統領が主張する法人税15%はもちろん、共和党の20%さえ実現することは不可能だろう(詳しくはこちら)。

インフラ投資の財源はどこに?

 だが、国境調整税は海外から製品を輸入する企業に関税を課すのに等しいため、大きな影響を受ける小売り企業を中心に反発は激しい。ウォルマートが拠点を置くアーカンソー州の上院議員が反対を表明するなど、共和党も一枚岩ではない(関連記事)。共和党は上院で過半数を取っているが、52議席とギリギリで、造反が出れば民主党のフィリバスター(議事妨害)で法案成立はおぼつかなくなる(税制改正に関して、ライアン議長は“財政調整”を活用するという意向を述べている。その場合はフィリバスター云々は関係ない)。

 トランプ大統領は演説の中で、1兆ドルに上るインフラ投資についても改めて強調した。こちらも財政と民間資金を活用するという従来の主張を繰り返しただけで財源は曖昧なままだ。トランプ大統領は議会にインフラ予算の承認を要請すると述べたが、財政規律に厳格な共和党の同意を得るのは簡単ではない。インフラ投資は民主党が賛成に回る可能性も十分にあるが、民主党との関係はハネムーン期間に大きく悪化しており、同党がトランプ政権に協力するかどうかは不透明だ。

“トランプ・リセット”の評価は時期尚早か

 財政問題はオバマケアの撤廃・置き換えにもついて回る。「オバマケアは崩壊している」とトランプ大統領は批判しているが、「共和党に回り始めたオバマケアの『毒』」の会で述べたように加入者のカバレッジを劣化させることなく財政支出を削減することは極めて難しい。代替案に関する共和党執行部のドラフトについても、ティーパーティの流れをくむ財政保守派(Freedom Caucus)が批判の声を上げている(関連記事)。

 企業関係者や市場参加者はインフラ投資や減税などの経済刺激策を期待しているが、それがどこまで実現するかは現時点では定かではない。その一つのリトマス試験紙が国境税調整だったわけだが、それに対する具体案の提示は先送りされた。3月半ばといわれる予算教書でも具体案がなければ、期待先行で上昇していた株式市場に冷や水を浴びせる可能性はあるだろう。

 今回の施政方針演説では左半分がスタンディングオベーションだった半面、右半分は座ったままで、時にブーイングも聞こえた。メディア批判は封印したが、批判的なメディアを一時、ホワイトハウスの記者会見から閉め出すなどメディアとの戦争状態が続いている。今回の演説が政権のリセットにつながったのかどうかは今の時点では何とも言えない。

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