米国最南端の町、ブラウンズビル。メキシコ国境に隣接する町には国境のフェンスが既にある。もっとも、両国を隔てるリオグランデ川から離れたところに建てられたため、実際の国境とフェンスの間に取り残された住民も少なくない。彼らの日常生活に支障が出ないよう、道路のところはフェンスが切れている。フェンスの目的が不法移民を阻止することだとすれば、その効果は全くない。
「米国第一主義」というスローガンの下、トランプ大統領は雇用の国内回帰と治安の強化を推し進めようとしている。その政策を支持する米国人は一定数、存在する。それでは、国境に住む人々はどう感じているのか。 フェンスの向こう側のアメリカである“No Man's Land”の住民、3回目に紹介するのは元ゴルフ場経営者のルシオ夫妻。フェンスによってゴルフ場の会員が減少、破綻につながったと語る。
(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)
(フェンスの向こう側 Vol.1 / Vol.2 から読む)
フェンスの向こう側 Vol.3 ルシオ夫妻
Robert Lucio(ロバート・ルシオ)
57歳
Diana Lucio(ダイアナ・ルシオ)
58歳
元ゴルフ場経営
ロバート:1987年から28年間にわたってリオグランデ川沿いでゴルフ場を経営していました。私にとって、このゴルフ場は生活の糧であり、強い思い入れのある場所でした。ところが、(2010年に)フェンスができたおかげで徐々に客足が減っていき、最終的に2015年5月に閉じることになりました。今ではもう草がぼうぼうですよ。完全に閉鎖です。
あのゴルフ場ができたのは1955年で、私たちが経営する以前からずっとありました。子供の頃、あのゴルフ場に父親と一緒に通い、ゴルフの練習をしたものです。その後、高校でゴルフに打ち込み、その奨学金で大学に行き、最終的にプロにもなりました。息子もプロゴルファーなんですよ。年間の収益でハーフミリオン(およそ5500万円)程度の小さなビジネスでした。それでも、私の原点とも言える場所です。
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