“合法的クーデター”の手順

 修正25条第4節は以下のような内容だ。

 「副大統領および行政府長官の過半数が上院仮議長と下院議長に、大統領が職務上の権限と義務を遂行できないと文書で申し立てを送る際には、副大統領が大統領代理として権限と義務を直ちに遂行するものとする」。

 つまり、ペンス副大統領と15人の閣僚の8人が「トランプ大統領は職務の遂行が不可能」と判断すれば、更迭できるということだ。

 民主党の一部はトランプ大統領を放逐するための手段として関心を寄せるが、過去にこれでクビになった大統領がいないという事実が示すように、実現のハードルは高い。

 副大統領や閣僚はトランプ大統領が指名した人物であり、通常の状況であれば忠誠心は高く、クーデターに加担するとは考えにくい(大統領は閣僚を解任することもできる)。また、同条項は大統領の不服申し立てを認めており、大統領の不服申し立てに対して上下両院の3分の2が副大統領を大統領代理として認めなければ、大統領の復帰が認められる。

共和党が大統領を切り捨てる可能性はあるか?

 今のところ、上下両院を制している共和党はトランプ大統領を支持しており、共和党がトランプ大統領を見限らない限りあり得ない。その中でなお、修正25条第4節が注目を浴びるのは、米国の国益と2018年の中間選挙を見据えたときに、絵空事と笑えない状況になっているためだ。

 共和党はオバマケアの撤廃、置き換えや大規模減税、法人税改革など宿願とも言える政策を推し進めようとしている。細部で意見の相違はあるものの、トランプ大統領も基本的に同じ方向を向いており、今のところ両者は手を携えて政策を実現しようとしている。

 だが、トランプ大統領の乱暴な政権運営に対しては懸念の声も上がる。

 1月27日に署名したイスラム教徒の入国制限に関わる大統領令は米国のみならず、世界中で混乱を招いた。細部を詰めず、議会への根回しもなく進めたことに対する批判は根強い。また、同大統領令の執行差し止めを命令した判事を「いわゆる裁判官」と嘲笑したことは、司法に対する侮辱と受け止められている。

 それ以外にも、長女のイバンカ・トランプ氏が手がけるブランドの取り扱いを停止した米百貨店ノードストロームに対する批判、企業に対するツイート介入、メキシコ大統領との会談中止や豪首相との険悪な電話会談など常軌を逸した振る舞いが続いている。このままの暴走が続けば国益と党勢にかかわる──。共和党幹部や閣僚がそう判断すれば、大統領を切り捨てる可能性もゼロではないという読みだ。

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