「トランプ大統領は『一つの中国』という従来の考え方を踏襲、尖閣諸島を含め、日本の施政権の及ぶ範囲の防衛義務を明言した。一連の動きを見ると、東アジア政策に関して、新政権が伝統的なアプローチにシフトしていることが見て取れる」。米シンクタンク、CNAS(Center for a New American Security)のリチャード・フォンテーヌ会長は指摘する。

 トランプ大統領は選挙中、日韓の核武装を容認する発言で物議を醸した。またロシアとの関係改善に意欲を示す一方で、北大西洋条約機構(NATO)を批判したり、在日米軍の駐留経費の増額を求めたり、同盟国を揺さぶる発言を続けていた。今回の首脳会談は、こういった不安を解消するものとして評価されている。

「麻生・ペンス経済対話」新設の意味

 もっとも、両首脳の記者会見を見ると、日本が望んだ方向に進んだ安全保障分野に比べて、為替政策や通商政策については両者の溝がうかがえる内容だった。

 「通貨の切り下げについてはずっと不満を述べている。最終的に、恐らく人々が考えるよりも早く、公平な競争条件になると信じている」。トランプ大統領は記者会見でそう述べると、「それがフェアな唯一の方法」と改めて念押しした。日本は通貨の切り下げは一切していないという立場だが、その主張にトランプ大統領が納得していないのは明らかだ。日系自動車メーカーに対する表立った批判もなかったが、国内での雇用創出や貿易赤字の削減という旗は下ろしていない。

 「安全保障についてはトランプ大統領がかなり踏み込んだという印象を持った。半面、為替や貿易赤字については根本的にかみ合っていないと感じた」。野村インターナショナルの雨宮愛知・シニアエコノミストは指摘する。

 今回の首脳会談で、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップとする経済対話の新設で合意、日本が避けたい二国間FTAや金融政策を巡る議論をここに押し込むことに成功した。何を言い出すか分からないトランプ大統領ではなく、ペンス副大統領を相手に実務を進めようという狙いである。その面では成功と言えるが、貿易と為替が日米の火種として残り続ける状況は変わらない。むしろ、首脳同士の記者会見でほとんど言及されなかったということが、今後の波乱を示唆しているのかもしれない。