こうしてみると、トランプ大統領が進めようとしている政策はことごとくドル高政策に見える。

 そうなると、次の焦点はトランプ大統領がドル高を容認するのかという話になる。現状、トランプ大統領は日本の金融緩和を円安誘導と厳しく批判している。財務長官に指名されたムニューチン氏は「強いドルは国益」と従来のスタンスを踏襲しているが、「雇用創出」という政権の一丁目一番地を考えると、トランプ大統領がドル高を容認するかどうかは微妙だ。

 ドル高は米国経済の相対的な強さやFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ政策、新政権の政策によるところが大きい。30年前は主要国の間でプラザ合意が成立したが、トランプ大統領の一方的な主張に各国が理解を示す可能性は低いと思われる。

 もっとも、それでトランプ大統領が納得するとも思えないので、ハト派のFRB議長を任命して金融緩和に転換させるなり、外国債を購入するなり、何か手を打つのかもしれない。ただ、経済の摂理に背いたところで不均衡のエネルギーが蓄積していくだけ。日本やドイツに無理難題をふっかけたとしても、いずれ何かの反動が起きるだろう。そうなれば、米国も無傷では済まない。

目先に踊る中間層、ほくそ笑む富裕層

 ここまで述べてきた話は反対に、富裕層やウォール街にはプラス要因だ。大規模減税は既に資産を持っている人間のほうが恩恵が大きい。規制緩和でドッド=フランク法が緩和されれば、規制で身動きが取れなくなっていた金融機関も万々歳だろう。トランプ政権の為替政策でマーケットのボラティリティが高まれば、ディーラーがさやを抜く機会も増える。

 大富豪や元軍人、ゴールドマン・サックスのOBが多いトランプ政権は、「Gazillionaire(大富豪)」「General(将軍)」「Goldman Sachs(ゴールドマン)」の3G政権と揶揄されている。トランプ大統領自身は経済成長から取り残された中間層やプア・ホワイトを本気で救おうと考えているのかもしれないが、実際の方向は恐らく逆である。

 トランプ支持者も、この結末に気づいていると思うが、トランプ氏が勝利したのは経済的な不満もさることながら、移民の増加を背景にした社会的、宗教的な不満も大きかった。それを思えば、長期的に米国が衰退したとしても、移民をブロックできればそれでいいのかもしれない。その時のアメリカが、我々のイメージするアメリカなのかは分からないが。