「トランプ大統領が主張している経済政策は大きく分けて、大型減税とインフラ投資などの財政政策、規制緩和、保護主義、移民抑制の4つある。そのうち保護主義と移民抑制がなければと思っていたが、最悪のシナリオになりつつある。選挙用のリップサービスではなく、行動を伴うものだという認識が市場参加者に広がっている」。野村インターナショナルの雨宮愛知シニアエコノミストは語る。

 TPP離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉、自動車メーカーへのツイッター介入で支持者を納得させて現実路線に回帰していく。勝手にそう考えていたこちらが浅はかなだけだが、トランプ大統領は見事に期待を裏切っている。

 「この瞬間からこの国はアメリカファーストになる。貿易、税、移民、外交問題に関するあらゆる決断は米国の労働者や家族を利するために下される」

 トランプ大統領が就任演説で語ったように、トランプ大統領の最優先事項は米国第一主義の実現、とりわけ失われた雇用の復活にある。自動車メーカーに対する批判や国境税などトランプ氏の主張は、突き詰めれば、メキシコや中国に流出した雇用を取り戻すことが目的だ。

根本的に中間層や低所得者層を痛めつける

 もっとも、トランプ大統領の米国第一主義を改めて整理すると、トランプ大統領が守るべき白人労働者もまた、彼に裏切られる可能性が高い。トランプ大統領が掲げている、あるいは実際に進めようとしている政策は、根本的に米国の中間層や低所得者層を痛めつけると考えられるからだ。

 例えば、国境税を見てみよう。この政策の主たる狙いは、安価なメキシコ産の流入を防ぎ、米国内の供給を維持・拡大するところにある。

 トランプ大統領の主張している国境税が単純な関税を意味しているのか、下院共和党の税制改革案にある国境税調整なのかは現時点では定かではない。ただ、国境税調整だとしても、輸入仕入高の損金算入が認められないということを考えれば、輸入品に関税を課しているのと同じような効果がある。

 輸入品にかかる関税を引き上げればどうなるか。為替動向を予想することは不可能だが、普通に考えれば輸入品の急激な価格上昇を緩和するためにドル高が進むか、輸入品の価格が上昇して物価が上がり、結果としてドル高になるかのいずれかだろう。

 一般論として、ドル高になれば輸出競争力が低下するため米国の製造業にはマイナス。白人労働者の雇用を直撃することは十分に予想される。