トランプ大統領は雇用を米国に取り戻すために、また貿易赤字を解消するために何をしようとしているのか。現時点でトランプ政権の具体策は見えないが、いくつかの可能性が考えられる(次ページの表を参照)。関税措置、非関税措置、そしてNAFTAの再交渉の3つに分けて見てみよう(メキシコの現地リポートはこちら)。

“Very Major”な国境税とは何か?

 まず関税を伴う措置としては、メキシコからの輸入品に関税を課すという単純なものから、メキシコの特定製品(自動車など)に対するアンチダンピング関税、セーフガード(緊急輸入制限)が考えられる。

 トランプ大統領はメキシコからの製品に35%の関税を課すとたびたび主張している。26日には、メキシコなど米国が貿易赤字を抱える国からの輸出品に20%課税して、国境の壁建設にあてたいと大統領報道官が発言した。ただ、いずれにしてもWTO(世界貿易機関)の最恵国待遇原則に反するため、メキシコを狙い撃ちにした35%の関税はWTOの枠組みで考えれば恐らく不可能だろう。アンチダンピング関税は、中国製の鉄鋼製品などで設定されているが、「メキシコからの輸入では不当廉売の事実がそもそも満たされない可能性が高い」(デロイト トーマツ コンサルティングの羽生田慶介執行役員)。セーフガードに至っては、特定の国を狙い撃ちにすることはできない。

 次に非関税措置としては国境税調整が挙げられる。これは共和党が検討している法人税改革の一部で、輸出売上高は収入から控除できる一方、輸入仕入れ高を経費として認めないというものだ。そのまま導入すれば、仮に法人税率が20%になった場合、輸出高の20%を補助金として受け取り、輸入高の20%を関税として支払うのと同様の効果が得られるため、米国内に生産拠点を戻すインセンティブが強く働く(トランプ大統領のいう“Very Major”な国境税とはこのことを指すと思われるが、別のアイデアがあるのかもしれない)。

 もっとも、国境税調整は輸出企業に対する輸出補助金と同義でWTO違反とみなされる可能性が高い。それ以外に税制上の優遇を与えることで国内調達を要求することも打ち手としては考えられるが、こちらもWTO違反の可能性が高い。トランプ政権がWTOルールを無視するということもあり得るが、そうなれば米国がWTOに提訴されることになる(そんなことは気にしないのかもしれないが…)。