1月20日に第45代米国大統領に就任したトランプ氏。選挙期間中の過激な公約をどこまで実現するのか疑問視する向きもあったが、初日から積極的に動いている。

 20日にはオバマ前大統領が駆け込みで導入した新規制の凍結・精査をラインス・ブリーバス大統領首席補佐官に指示、オバマ前大統領のレガシーの一つ、医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃、置き換えに向けた大統領令も発令した。23日にはTPP(環太平洋経済連携協定)の永久離脱を宣言、肥大化した連邦政府をスリム化するための職員の採用凍結や、オバマ政権が止めていた原油パイプラインの建設推進に関わる大統領令を出した。主要政策の一つであるメキシコ国境の壁建設や移民の規制に関わる大統領令にも25日に署名している。 

オセロのように政策が転換

 議会との関係悪化を受けて、オバマ前大統領は大統領令によるリベラル政策の実現を目指した。だが、ペンによる統治はペンによって書き換えられる。そして今、オセロのようにオバマ前大統領の政策がトランプ色に塗り替えられている。

工場予定地の管理人
よほどヒマだったのか、フォードの現場で働いていた人がいるという付近の村を案内してくれた

 今回の権力移行で最も影響を受けるのはどこかと問われれば、それは間違いなくメキシコだ。

 国境の壁という物理的な障壁だけでなく、トランプ大統領が唱えるNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉と不調に終わった際の離脱、米国企業に対する「国境税」、不法移民の取り締まりや移民抑制はどれもメキシコに関わるものだ。米国向け輸出が全体の8割を超えているように、メキシコ経済の米国依存度は極めて高い。“国境の壁”で対米輸出が滞れば、ただでさえ低調な経済成長はさらに鈍化する。

 トランプ大統領によるメキシコへの揺さぶりは激しさを増している。

隣人カナダもメキシコに及び腰

 国境の壁建設に関する大統領令に署名する際には、最終的に費用はメキシコ政府に支払わせると重ねて明言した。国の尊厳に関わるだけに、メキシコのペニャニエト大統領は当然のごとく拒否しているが、トランプ大統領は払わないのであれば31日の首脳会談をキャンセルしたほうがいいとツイート。実際に会談は中止になった。

 現状の分が悪いのはメキシコだが、国内は反トランプでまとまりつつある。メキシコでは左派のポピュリズム政党が勢力を伸ばしており、このままトランプ大統領がメキシコ叩きを続ければ、2018年の大統領選で反米色、反グローバリゼーション的なポピュリズム政権が誕生する可能性もある。そうなれば米国にもマイナスだ。

 トランプ政権に目をつけられるのを恐れてか、同じNAFTA仲間もメキシコを避け始めた。

 「交渉上の立場は(メキシコとカナダでは)全く違う。メキシコは高層ビルの窓からぶら下がっているようなものだ」。カナダの政府関係者がロイターの取材に述べたように、生産拠点の移転や多額の貿易赤字を攻められているメキシコとは異なり、カナダは今のところトランプ大統領の照準には入っていない。

 米国とカナダ、米国とメキシコに比べれば、カナダとメキシコの貿易額は10分の1以下。下手にメキシコの肩を持ってトランプ大統領ににらまれるのは避けたいという思いが透けて見える。