報道によれば、州政府は地元経済に及ぼす影響を今後5年で数十億ドルに達すると見積もっている。また、メキシコの不動産サービス大手コリア―ズ・インターナショナルによれば、フォードの工場投資に伴って40~50社のサプライヤーがサン・ルイス・ポトシ周辺に来る予定だった。その中の12~14社に至っては、実際に土地のリース契約や購入契約を交わしていたと見る。「フォードの状況を考えると、この地域のビジネス活動も20%は落ちるだろう」(コリアーズ・インターナショナルのマネージングディレクター、セルジオ・レセンデス氏)。

「すぐに別のメーカーが進出してくるよ」

 「政府から工事を止めるよう指示があった1月3日以降、建設業者はみんな引き上げている。フォードのキャンセルは残念だが、サン・ルイス・ポトシにはBMWもいれば、グッドイヤーやGMの工場もある。すぐに別のメーカーが進出してくると思っているよ(BMWは2019年に新工場を稼働予定)」。現地の事務所に残っていた電気設備会社IIPSAのエクトルアンヘル・ナヘラシスネロス氏は努めて前向きに語る。

 がらんとした予定地を見渡すと、途中まで組み上げた建屋が2つ放置されている。プレス機を置くための地盤改良だろうか、大きく掘られた穴もそのままだ。乾いた風がメキシコ高地特有の細かな砂を巻き上げている。就任演説でトランプ大統領は米国の寂れた工場を“墓石”と評したが、ここは米国が推進した自由貿易の墓標として記憶されることだろう。

こちらはプレス装置を置くためと思われる巨大な穴。ほとぼりが冷めたらフォードは再びここに戻ると語る地元関係者もいたが…。
唯一、現場に残っていた電気設備会社の現場所長エクトルアンヘル・ナヘラシスネロス氏。契約主の工業団地に「もう止めろ」と言われるまでここにいるという