テキサス州、シカゴ、ボストン――。米国で立て続けに賃貸住宅事業を展開する大和ハウス工業。一度手掛けたが撤退し、実に30年ぶりの再挑戦だ。過去の経験に何を学び、事業をどう広げようとしているか。その模様を追った。

※日経ビジネス1月30日号特集「スッポン経営 大和ハウス」はこちらから

大和ハウス工業が米テキサス州で展開する賃貸住宅事業「ウォーターズ・エッジ・プロジェクト」

 米国南部テキサス州の中核都市、ダラス近郊を車で走ると、レンガ調の広大な住宅街が見えてくる。11万㎡の敷地に建つ、大和ハウス工業が開発した約580戸の賃貸住宅だ。近くには遊歩道を整備した湖があって散策できるほか、スポーツジム、プール、バーベキューコーナーなど共用設備も数多い。この「ウォーターズ・エッジ・プロジェクト」は大和ハウスが2014年から開発し、昨年末に全て完成した。

中庭のプールなど共用設備が充実している

雰囲気はまるでホテル

 テキサス州では、別の賃貸住宅「バークレープロジェクト」も開発した。敷地面積10万㎡で、700戸を超える賃貸住宅を展開する。こちらも入居者専用のプールなど、快適な共用設備を備えている。

 「職住近接で、ホテルのような高級な雰囲気が入居者に好まれている。入居率は2つとも100%近い」(現地法人ダイワハウステキサスの脇田健社長)。入居者の中心は「ジェネレーションY」と呼ばれる1975~89年生まれの世代で、世帯年収が高い専門職、大手企業の社員などだ。

 2つのプロジェクトの開発を後押ししたのが、2014年の米不動産会社リンカーンとの提携だ。同社は1960年代に創業した賃貸住宅管理の大手。創業家の存在感が強く、意思決定が速い。創業者の教えを通じて社員の意思統一を徹底する大和ハウスと社風が似ていることもあり、大和ハウスはリンカーン社をパートナーに選んだ。

 大和ハウスは一度、米国に進出した歴史がある。1976年、カリフォルニア州やテキサス州を中心に4つの現地法人を立ち上げ、1984年までの9年間に約1万戸の分譲住宅を供給した。ところが為替変動の影響などで赤字となり、やむなく撤退した。

 分譲住宅は、物件が売れない時に在庫として抱え、価値が目減りするリスクが大きい。そのため今回は「確実に賃貸需要がある場所に物件を保有して、手堅く家賃収入を得ていく」(芳井敬一専務執行役員)形で、米国事業を広げている。自前で展開することが多かった前回とは反対に、今回はリンカーン社というパートナーを見付け、物件を開発していることからも手堅さがうかがえる。