国産天然水のパッケージ、定番と新製品を比較
「晴れと水」VS「サントリー天然水」、斬新なパッケージでトップブランドと拮抗
“売れるデザイン”を解き明かす雑誌「日経デザイン」での好評連載。これまでnikkei BPnetで転載(バックナンバーはこちら )していたコラムを、本年からは日経ビジネスオンラインでお届けする。今回は、定番商品の「サントリー天然水」と、キリンビバレッジが2017年5月に発売した「晴れと水」のパッケージデザインの好感度を比べた。
今回の調査対象は、「晴れと水」(A)と、「サントリー天然水」(B)。
AとB、どちらの商品を買いたいかを聞くと(Q1)、50%対50%で拮抗していた。
晴れと水は、2017年5月に発売したキリンビバレッジの国産天然水。同社は「きれいな水を体に取り入れることで、気分が晴れやかになる」という、国産天然水の新しい価値軸の創出を狙っている。名前の由来は「心や身体が“晴れわたる”のに必要な、心地よい“晴れ”と、きれいな“水”」。ラベルに描いた●■▲で、それぞれ“晴れ” “水” “森(白樺)”を表現した。
一方、サントリー天然水は、国産天然水の市場において21年連続で売り上げトップを維持している。2016年の年間販売数量は1億ケースを突破した。南アルプスなどの大自然を採水地としていることが特徴で、ペットボトルには植物由来の素材を30%使用。環境にも配慮し、高品質な天然水のイメージを訴求している。
国産天然水分野での新商品のポジションは、圧倒的に強いBとの違いを打ち出しつつ、認知度を高めることが重要になる。Aのパッケージでは、流れる水をイメージさせる青を基調としたグラフィックを採用し、Bと拮抗する評価を得ることに成功している。
世代ごとに割れる評価
全体では拮抗しているが、年代別では傾向に大きな差が出る。例えば、Aを購入したい人の割合は男性40代と女性40代の60%が最も多かったが、Bを購入したい人の割合は女性20代と女性60代の63.3%が最も多かった。
日常的に国産天然水を購入している人の割合を調べたところ(Q2)、全体では「たまに購入する」が43.6%と最も高く、「日常的に購入している」のは全体の19.7%。日常的に購入している人が最も多かったのは女性40代の33.3%で、次点が男性60 代と女性50代の23.3%だった。
次に、パッケージから感じる印象を聞いた(Q3)。Aでは、「デザインが好き」と「デスクやテーブルに起きたい」が62.7%、「持ち歩きたくなる」が62.0%と続く。自由コメントでも「デザインが好きだから、飾ったり、持ち歩いたりしたい」という意見が目立つ。
一方のBは、「ナチュラル(自然)な感じがする」が70.0%、「子供に飲ませたい」が63.7%、「毎日飲みたい」が62.7%と続き、安心かつ安全なイメージが強い。
続いて、Aのデザインが好かれる理由を探るため、どの部分を見て買いたいと思ったかを聞いたところ(Q4)、「『晴れと水』のロゴマーク」が24.7%と特に人気だった。しかし、男女別では評価が分かれた。女性では、全体と同様「『晴れと水』のロゴマーク」が31.0%、「●(晴れ)■(水)▲(森/白樺)のグラフィック」が21.6%など、ラベルデザインに高い評価が集まった。一方、男性では、「うねうねしたストライプのようなグラフィック」が25.0%、「全体的な色合い」が23.7%と、背景のグラフィックやカラーに高い評価が集まった。
シンブルなデザインに「斬新」の声
パッケージに対する自由コメントには、世代による好みの違いが顕著に表れていいる(Q5)。Aに対するコメントでは、Q4と同じく、ストライプのようなグラフィックや、ネーミングやロゴマークに対する意見がかなり多い。前者には「爽やか」、後者には「お洒落」などのコメントが目立つ。また、Aを最も評価している40代の男女は、「今までにない爽やかさ」「インパクトがあった」などデザインの斬新さを評価している。
Bに対しては、「親しみがある」という意見が多い。ラベルデザインも好評で、ネーミングや山脈のグラフィックは「きれいな湧き水を連想させる」と好印象。Bを最も評価しているグループは、20代女性と60代女性。両者には、鳥や花のグラフィックに対する「可愛らしい」という意見が多いという共通点があった。
逆に、国産天然水のメーン購買層である40代女性は、鳥や花のグラフィックにあまり興味を示さなかった。パッケージ全体に対しては、「古いデザイン」「飽きた」などと否定的な声もある。
選んだ商品がいくらまでなら買いたいかを聞くと(Q6)、Aは12.9円、Bが13.5円。ともに、デザインは商品の13%程度の付加価値だった。
国産天然水のパッケージでは、山や森、緑などを強調するデザインが多かった。今回の結果を見ると、今後、Aのような爽やかでシンプルなグラッフィックが増える可能性がある。
(初出:日経デザイン2017年8月号)
「日経デザイン」はビジネスや経営にデザインを活用するための総合情報誌。デザインにかかわる「経営」や「投資」、また「色」「ブランド」「文字」「パッケージ」などのテーマを設定しヒットの舞台裏を深堀り。企業経営者、製品開発の現場から取材した豊富な事例を基に、どうすればデザインでビジネスを成功に導けるのかを解き明かします。
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