日経ビジネス1月29日号の特集「世界で勝つ! ロビー活動」では、経済成長が著しい一方、法律や制度が未整備な部分も大きい新興国で企業が取るべき戦略について取り上げた。「袖の下」などのイメージが強いアジアでのロビー活動だが、長崎大学の松島大輔教授は、「各国首脳をはじめ、その意識は大きく変わっている」と指摘する。新興国の産業政策に詳しく、現場での経験も豊富な松島教授に、新興国におけるロビー活動の今と、日本企業が向き合うべき姿勢について解説してもらった。

大手自動車メーカーをはじめ多くの日本企業が進出しているアジアですが、ロビー活動の実態についてはイメージが掴みにくい部分があります。

松島大輔教授(以下、松島):私はインドに5年、タイにも5年おりまして、政府側でサポートをするような立場にもいました。そうした経験からお話しすると、まず基本的に日本の大手企業というのは、もともと日本と同様に業界団体を通じたロビー活動を展開するケースが通例だったと言えると思います。

 例えば自動車であれば、日本自動車部品工業会のような団体を通じてロビー活動を行います。特に、現地に工場を持っているようなケースでは、そうした団体が有力な窓口になります。あとは、現地の地場企業と連携する形でのロビー活動もありますし、日本企業全体の声を取りまとめる形で、バンコク日本人商工会議所などが中心になるケースもある。

 ただ、こうした日本企業全体の声、つまり総論というのは、どうしても総論ですから各企業の思惑を必ずしも全面的に反映しているわけではありません。インドの場合であれば圧倒的なシェアを誇るスズキと、トヨタ自動車の戦略は当然異なりますよね。生産なのか、部材調達なのか、はたまた輸出入なのか、各社の事業上のポイントは変わってきますから。

松島大輔(まつしま・だいすけ)教授
東京大学を卒業後、1998年通商産業省(現経済産業省)に入省。通商政策などに携わり、インド駐在時には日本企業のインド進出を支援。数々のプロジェクトに携わり、アジアにおける日本企業のビジネス、新興国の通称政策や産業政策に精通。タイ王国政府国家経済社会開発委員会では政策顧問も務める。

各社が重視する部分が違えば、戦略も異なりますからね。

松島:そうです。現地でどれだけシェアを持っているか、どのようなサプライチェーンを整備しているか、各社の状況は様々ですし、2010年以降はその構造がより複雑化してきています。そのため、「ワンボイス」での古典的なロビー活動ということが、調整の面では難しくなっている部分もあると考えています。

 大企業は独自の戦略やネットワークを駆使して、これまでも海外展開に取り組んできたわけですし、今後はより独自の戦略を組み立てていかなければ、グローバルでの競争には勝てないということですね。もう一つ、私が注目しているのは中小企業がロビー活動にどのように取り組むべきかという観点です。