「ウーバーの失敗はロビー活動の失敗」
ウーバーの事例は「新ビジネス」の側面でもロビー活動の重要性を示している。日本市場はミャンマーやタイなどに比べてビジネス環境が整っているにも関わらず、同社はライドシェアサービスを展開できていない。自家用車で乗客を運ぶことができない規制があるためだ。企業がこれまでにないビジネスを始める場合、必ず突き当たる壁だといえる。
同社は本業であるライドシェアサービスを一旦はあきらめ、飲食店の宅配を請け負うビジネスを展開しており、その間にロビー活動を仕切り直そうとしている。同社に近いある関係者は、こう言ってため息を突いた。
「ウーバーの失敗はロビー活動の失敗。当初から規制当局やタクシー業界と友好な関係を築けていれば、こうはならなかったはず」
同社は現在、自社のライドシェアアプリを自家用車にではなくタクシー会社に提供しようとしている。最初に良い関係を築けていれば、こうした発想が最初から出てきた可能性がある。
「仕切り直し」の余裕はない
「ロビー活動はビジネス活動のフロントローディング」と考えるのは、ウーバーのような事例が多く見受けられるからだ。新市場への進出でも新ビジネスへの参入でも、最初からロビー活動を組み込んでおけば、ムダな問題が後工程で生じづらい。
日本企業は今、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの新技術の登場で「100年に1度」(トヨタ自動車の豊田章男社長)と言われる変革期を迎えている。ここにドナルド・トランプ米大統領に端を発する世界的な保護主義の流れが追い討ちをかけている(特集記事を参照)。
この未曽有の危機を乗り越えるには、「仕切り直し」をしている余裕はない。フロントローディングのロビー活動でスピーディーに新市場や新ビジネスを開拓することが、産業の成熟に悩む日本企業には求められている。
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