企業が成長を続ける手段はたったの2つ

 日本企業の多くが現在、直面している課題は「産業の成熟」にある。世界の名だたる大企業が社員を送り込むスイスのビジネススクール、IMD(国際経営開発研究所)のヨアキム・シュワス教授に取材をした時、こんなことを言っていたのが印象に残っている。

 「企業が成長を続けるには2つしか方法はない。一つは同じビジネスを海外など新しい市場に展開すること。もう一つは全く新しいビジネスを始めることだ」

 シンプルだが本質を突いていると思った。ロビー活動の取材をして初めて気づいたのだが、この双方においてロビー活動は大きな効力を持つ。

地元ベンチャーがウーバーに勝ったワケ

 まず新市場。特集ではミャンマーやタイ、中国の事例とともに日本企業が現地でどのような取り組みをしているかを取り上げている(特集の記事を参照)。特にミャンマーは、ビジネスを展開するための制度やインフラ整備が未熟。日本企業が進出する場合は、地元の政府や財閥といった権力者と友好な関係を築いておくことが欠かせない。

 従来の常識からすれば、「どうせ裏金が必要なんだろう?」とかんぐられるかもしれないが、実際に必要なのは金というより「人脈」だ。現地の有力者と組んだ方が現地の文化や慣習に見合った行動が取れる上、信用も高まる。それを知らずに自国でしているのと同じようにふるまっていては足元をすくわれる。

 米ライドシェア(相乗り)アプリ大手のウーバーテクノロジーズが世界のあらゆる市場に進出したが、各地で苦汁をなめていることは周知の通りだ。東南アジアでは、シンガポール発ベンチャー企業のグラブが市場の7割を占有、ウーバーとの闘いを現時点では制している。

東南アジアのライドシェア市場で圧倒的な強さをみせるグラブ

 グラブの勝因は、地域の有力者と組み、その地域に見合った戦略を取ったこと。インドネシアでは大手財閥のリッポー・グループと提携し、電子マネー事業を展開したことがアプリの使い勝手向上につながった。ちなみにグラブは、ソフトバンクやトヨタ自動車などから出資を受けていることでも知られる。