(写真:Javier Pierini/Getty Images)
(写真:Javier Pierini/Getty Images)

 これまで3回にわたり、企業の飛躍的な生産性向上を実現する手法として広まりつつあるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とはどういうものなのかを解説してきた。今回はRPA時代を迎えるにあたり、人の働き方や求められる人材はどのように変わるのか、あるいはどのような準備が必要なのかという視点で深掘りしていきたい。

 RPAが人間の仕事を奪って、人間の仕事が無くなってしまうというのは誤解であると第2回に述べた。RPAが働き方をどのように変えるかを考える前提として、今後予想される日本の就労人口の構造変化とその影響について押さえておきたい。

(作成:アビームコンサルティング)
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 2016年4月に経済産業省が発表した「新産業構造ビジョン 中間整理」では、2015年現在の日本の就労人口6334万人が、2030年には5599万人と735万人も減少すると予測している(現在の性・年齢階級別の労働力率が将来も変わらないとする労働参加現状放置シナリオの場合)。

 一方で、今後の第4次産業革命をリードすることで日本経済の成長を促し、国内総生産(GDP)を532兆円から846兆円へと約1.6倍増大させるビジョンを掲げている。

 これを実現するためには、就労人口1人あたりGDPを2倍近く引き上げなければならない。そのためには、人は今とは異なる、付加価値の高い働き方にシフトする必要がある。その解決の1つがロボット化の導入だ。

 日本経済は潜在成長率の天井にぶつかり、企業はビジネスチャンスはあるのに実現する人が居ないという事態に陥りかねない。ロボット化を進めないと人が足りない時代がやってくるのだ。

RPA時代に求められる人材とは

 RPAの活用が進んだとき、ホワイトカラー業務はどの様な姿になっていくだろうか。ロボットが得意な定型的な業務や、非定型で専門的な業務もロボットが代替するようになるとき、ロボット活用を前提とした新たな役割分担が進むと予想される。

 まず、現在は比較的定型的な業務を行っている人の多くは、商品企画、顧客と接する提案型の営業といった人間ならではの知恵・感性やコミュニケーションが必須となる役割にシフトせざるを得ない。

 商品ライフサイクルの短期化が指摘されるようになって久しい。これは個人にも置き換えられる。自分に合った新しい価値を求めるユーザー欲求は飽和することがなく、今後も加速するだろう。作業レベルの仕事はロボットが担ってくれるようになる反面、人間の感性や知恵により、顧客が求める新しい価値を継続的に生み出すことが企業継続の必須要件になる。この領域で活躍する「クリエイティブな事業推進者」の役割を担う人が増加するのではないだろうか。