(写真:Andrew Bret Wallis/Getty Images)
(写真:Andrew Bret Wallis/Getty Images)

 RPA(Robotic Process Automation)ツールの技術は日々進歩している。だが現在のロボットができることは、人間ができることの一部分に過ぎない。一方で、ロボットの方が人間よりも優れている部分もある。では、現時点でロボットはどこまで人に代われるのか。有効なRPA活用を考える上では、それを理解する必要がある。

 私たち人間が日々行っている業務を分解し、ロボットに「出来ること」「出来ないこと」、あるいは「得意なこと」という視点で整理してみたい。

作成:アビームコンサルティング
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 人間はそれぞれのステップにおいて、「目」「耳」「口」「手」「頭」を駆使して作業を実行している。例えば、「情報を視覚的に認識し(目)、必要な情報を取捨選択(頭)する」とか、「選択した情報を入力(手)し、情報を集計(頭)後、帳票に出力(手)する」といった具合だ。

 ホワイトカラー業務を遂行する際には、「Input(情報の取得)」「Process(情報の加工)」「Output(情報の提示)」という3ステップを必ず行っている。それらをロボットにどう置き換えるか。現状の技術水準や今後の動向について、順に見ていこう。

9割の入力作業を削減した企業も

 まずはInput。人は目や耳を使って紙資料や画像、音声を認識し、取捨選択の判断や取得の範囲の検討を行っている。この作業をロボットの機能に照らし合わせて考えてみよう。ロボットは、「目」にあたる画面認識や光学文字認識(OCR)といった技術を利用して、元の資料や画面に表示される内容を認識し、組み込まれた一定のルールに従って必要情報を抽出する。

 現時点のロボットは、人間の目のように何でも不自由なく読み取れるという訳ではない。テキストデータ等に電子化している情報であれば、社内システムの画面や手元のエクセルファイル、外部のウェブサイトであっても問題なく認識することができる。

 一方で、紙に印字された情報や、写真のように電子化できていない媒体からの認識精度はまだ100%ではなく、その読み込みを完全にロボットに任せることは難しい。また、人間であれば紙資料などの様々なフォーマットも柔軟に意味を読み取れるが、現在のロボットではその機能はまだ発展途上にある。

 企業の導入事例を見てみよう。流通業で従業員4000人程度のある企業では、子会社から様々な申請書類が紙で送られて来て、それをシステム入力する作業を行っていた。申請書はファクスや紙で受領し、人が目で見て必要情報を手で入力していた。

 当初、この業務をロボットで代行する際には、これまで通りファクスや紙で受領した資料を直接ロボットに読み込ませて、登録処理を行うようにして欲しいという要望だった。しかし、現在のロボットでは紙媒体からの読込精度が100%にならないため、精度が重要な当該業務においてはその方式でのロボット化を見送った。

 そこで、受領する申請書の大部分をエクセル化し、電子メールに添付して送付する形に業務を変更するよう、各子会社に依頼した。できないものは従来通り人間が読み取って手入力する。一部手作業は残ったが、大部分の申請をロボット化し、結果として90%の作業が削減できたという。

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