人口減による「自治体消滅」の危機は、地方を中心に徐々に忍び寄る。都市が活力を保ち続けるには、「働く世代」を呼び込むことが欠かせない。
日経ビジネスと日経BP総合研究所は働く世代2万人への調査から「活力ある都市ランキング」を作成し、日経ビジネス1月25日号の特集で掲載した。ランキング1位の東京都武蔵野市のほか、福岡市、札幌市、愛知県長久手市など、働く世代が支持する先進自治体の取り組みを紹介しながら、ヒトや会社を呼び込むヒントを探った。
前回は、ランキング5位の福岡市の起業支援の取り組みを紹介した。今回は、企業誘致に関するユニークな施策を取り上げる。
福岡市では東京の企業が本社を移転したり、新しい拠点を構えたりする動きが拡大している。
福岡市は中心部と空港や港とが近いコンパクトな街で、オフィスを立地する上で利便性が高い。現在約153万人の人口も増加し続けている。特に、10~20代の若い層の流入が顕著で、大学も多いことから、企業が新卒を採用しやすい環境にある。アジア各国に近いことも、海外への事業展開で有利に働く。
BCP重視で第2の本社

2015年4月、マスミューチュアル生命保険はBCP(事業継続計画)を重視して本社機能の一部を福岡市に移転、本格稼働させた。移転先に福岡市を選んだ理由として、自然災害が少ないことや現地採用による人材確保のしやすさ、自治体のサポート体制などを挙げている。
当初、東京本社からは管理職を中心に10人強が異動し、2015年12月時点で120人のスタッフが勤務している。福岡本社には社員交流やイベントなどに使用する多目的スペース「Palette」を設けた。ここは、大地震などの有事の際に東京本社のスタッフが働くオフィスとなる。
マスミューチュアル保険は2015年に福岡本社で6人の新卒を採用した。新卒採用は同社として10年ぶり。2016年入社も8人に内定を出している。
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