人口減による「自治体消滅」の危機は、地方を中心に徐々に忍び寄る。都市が活力を保ち続けるには、「働く世代」を呼び込むことが欠かせない。
日経ビジネスと日経BP総合研究所は働く世代2万人への調査から「活力ある都市ランキング」を作成し、日経ビジネス1月25日号の特集で掲載した。ランキング1位の東京都武蔵野市のほか、福岡市、札幌市、愛知県長久手市など、働く世代が支持する先進自治体の取り組みを紹介しながら、ヒトや会社を呼び込むヒントを探った。
中でも、ランキング5位の福岡市は「起業しやすい」都市として評価が高く、企業誘致においても実績を残している。そこには、人口増という強みにあぐらをかくことなく、企業集積に向けて攻めの姿勢を貫く市の姿が浮かび上がる。今回は、特集では紹介しなかった地元ネットワークの存在についても取り上げる。
福岡市の開業率は7.0%(福岡アジア都市研究所調べ)と全国21主要都市の中で最も高い。市内に大手の製造業の企業がなく、市内総生産の9割以上を商業、サービス業などの第三次産業が占めている。
「起業が盛んになることで雇用が生まれ、新しい商品やサービスによって市民の生活の質も高まる。既存の企業にとっても新商品・サービスを活用したビジネスが展開できるなど、相乗効果も望める」と福岡市創業・大学連携課の的野浩一課長は指摘する。
1年余りで40人が起業
起業家を生み出す場の1つが、福岡市の中心街、天神にある「スタートアップカフェ」だ。ここには、コンシェルジュと呼ばれるアドバイザーが常駐し、起業に向けて様々なサポートを提供している。カフェの運営費用は福岡市が負担しているため、相談は無料だ。

ウェブ系の広告代理店勤務を経て、ベトナムの消費者向けのレシピ共有サイトを開発しているスクーティーの掛谷知秀氏も、スタートアップカフェをきっかけに起業した。
最初に相談を持ちかけたコンシェルジュは、「アイデアは面白いので、東南アジアの市場規模や会社のチーム構成を検討しよう」と、漠然としたイメージを具体化するところから力を貸してくれた。5カ月後に法人登記するまで様々なアドバイスを受けたことに、「ここまでやってもらっても無料なのか」と感激したそうだ。
カフェが開設して1年余りで延べ約1600件の相談が寄せられた。カフェを利用して起業した会社はすでに40社以上に上る。
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