買い物していても外で食事していても、誰しもが受けたことのある接客サービス。なかでも日本流のサービスは、「おもてなし」との言葉が示す通り至れり尽くせりのスタイルが消費者にも定着。世界的にも高い評価を受けている。

 だが市場が成熟しきった日本では消費者の価値観が多様化し、画一的で硬直した接客サービスも目につくようになってきてはいないか。それでは顧客が本当に求めているサービスとは、どんなものなのだろう――。日経ビジネスは、国内在住の約1000人にアンケート調査を実施した。

吉野家は顧客ニーズの変化をとらえ、伝統的な「フルサービス」の見直しを進めている(写真=北山宏一)
吉野家は顧客ニーズの変化をとらえ、伝統的な「フルサービス」の見直しを進めている(写真=北山宏一)

 取材班は消費者が日々受けていると想定される様々な接客手法について、企業取材などを通じてリストアップ。調査会社マクロミルの協力を得て2017年12月、インターネットを通じてそれぞれ「好き」か「好きではない」か聞いた。

 そこから見えてきたのは、提供者は良かれと思って実施しているサービスでも、モノによっては消費者から歓迎されていない、ときには、それが原因で客を遠ざけかねないものさえあるという現実だ。

「いらっしゃいませ」に支持

 まずは「大丈夫」といえる、客から歓迎されている接客。「好き」という回答が「好きではない」の3倍以上にのぼったものを分類した。

 最も支持されていたのは「いらっしゃいませ」という声がけ。「好き」とする回答は663人と、「好きではない」の24人を圧倒した。東京都の50代女性は「客として認識されたという安心感が得られる」。千葉県の10代男性も「迎え入れられている感じがして気持ち良い」との回答を寄せた。

 好まれているサービスを見渡してみると、実利として客がメリットを感じられるものが多いようだ。「弁当に添えられる『おしぼり』」は肯定派が521人に対し、否定派はわずか18人。同じく「温かい食べ物・冷たい食べ物を別々の袋に分けて入れる」は肯定派が604人で、否定派は14人しかいなかった。

 ホテルや旅館などで「従業員が、部屋まで荷物を運ぶ」も「好き」が473人で、「好きではない」(78人)を大幅に上回った。

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