ロシアにしろ、日本にしろ、まだまだスタートアップの絶対数は少ない。また、製品・サービス市場では大企業の存在感がとても大きい。従って、顧客を増やそうとすると、早い段階で大企業を相手にする必要がある。しかし、大企業とスタートアップでは、ゾウとネズミほどにその感覚の違いがある。時間感覚はもちろん、リスク性向や意思決定プロセスなどその違いへの無理解がスタートアップにとっては致命的となる場合もある。その違いを踏まえて、やりとりをいかに円滑にするかが大きな課題となる。

急成長するためのサービス展開のやりやすさ

 シリコンバレーではスタートアップの新陳代謝が激しい。ブランド力に加え、その新陳代謝はチャンスをもたらすと解釈され、米国内だけでなく、海外からも人材を強く惹きつけているが、これは、米国外の土地で暮らしたことがあり、そこの文化に精通している人たちが自然と集まってきていることを意味する。

 先ほど挙げた壁の3つ目、急成長するためのサービス展開スキームの確立への回答として、海外展開がある。実際、シリコンバレーの目立ったスタートアップは早々に海外展開を始め、グローバルでの収益拡大を図っている。これを促す条件の1つは英語が公用語であるということだが、さらに重要なのは、展開先の国に精通した人間を確保しやすいということだ。海外拠点を作ろうとしたときに現地で信頼できる人間と出会えるかというのは、かなり重要な問題だ。シリコンバレーのスタートアップの状況を知り、その展開先の土地柄を知っている人が、その海外拠点に戻るかどうかは別にして、計画の策定や遂行管理をできるということは非常に利点がある。

 一方、この点もロシアと日本で共通しているところだが、いずれの国でも母国語の勢力が強い。モスクワの交通案内や飲食店ではロシア語表記だけであるところが圧倒的に多いし、日本でも、最近はマシになりつつあるとはいえ、例えば飲食店で英語が通じるところはまだまだ少ないだろう。このことは海外の人材を惹きつけるのには障害になっているといえる。

モスクワの街角の一風景。真ん中の看板はバーガーキング(Burger King)のキリル文字表記だ

 さらに微妙な問題は、いずれの国も、そこそこの市場があるということだ。ロシアは約1億4000万人の人口がありヨーロッパではトップだ。毎日ネットを使っている人も約6000万人いるとされ、これはイタリアの総人口と同じくらいとなる。日本の人口は約1億2000万人、ネット人口は約1億人だ。母国語が強いことも相まって、ある程度の国内市場があると、法人・個人問わず、サービスは内向きになりがちだ。

 つまり、海外に出て行くのは言語的にハードルが高く、国内に閉じてもそこそこ稼げるということになる。そうなると、スタートアップが雇用するのも同国人にした方が効率がよく、海外展開するときに現地に足がかりがないということになる。周りに海外展開している会社が少ないから、情報も行き渡らない。ますます、海外展開へのハードルはあがるという悪循環だ。

 もちろん、この問題は、ロシアにしろ日本にしろ、スタートアップ関係者には十分意識されていて、グローバル市場を狙うスタートアップは増えている。ここで指摘したいのは、シリコンバレーの環境とは違う問題に対処する必要があるということだ。