後述するが、スコルコボ内で頻繁に行われるコンテストやハッカソンのようなイベントも、そういった技術の事業化という意識を醸成することにつながるだろう。卒業生の1人に話を聞いたところ、ロシアの他の大学と比べると、教授との距離も近く、企業から請け負った研究でなく自分が事業を行うために研究することが大きな魅力となっているとのことだった。

 最初の卒業こそ50人程度だったが、2020年までには学生数は1500人となり、20万3000平方メートル、東京ドームで換算すると4.3個分の敷地面積のキャンパスができる計画だという。第1回で位置関係を比較した慶應義塾大学日吉キャンパスは43万平方メートルの敷地に約1万人が通っているので、約半分の面積に6分の1以下の学生数ということで、かなり広々とした環境になりそうだ。

スコルテックの教室の1つ。かなり自由度の高い教室だ
スコルテックの教室の1つ。かなり自由度の高い教室だ

スコルコボでの人材交流の仕掛け

 前回そして今回と紹介してきたように、スコルコボには参加企業としてのスタートアップに属する人たちがいる一方で、スコルテックで学び、研究している人たちがいる。これらのスコルコボで活動している人たちの間、また外部の投資家や協力企業、アドバイザーなどをつなぐ仕掛けが、大小さまざまに行われているイベントだ。

 その中で最大のものが毎年6月に行われるStartup Villageである。これは2月ごろから広大なロシアの各所で行われるStartup Tourという起業家が投資家にアピールするピッチコンテストの総仕上げの位置づけでもある。2015年は2日間の会期で、会場の随所でクラスターごとのピッチコンテストや有識者のインタビュー、パネルディスカッションなどが行われていた。また、フィンランドやトルコ、スペイン、フランスなどのテックパークのパネルディスカッションもあった。

 いくつか実際に行われているイベントについて見てみよう。まず、エネルギー、原子力、情報技術、宇宙・通信、医療の各クラスターがそれぞれのテーマで定期的に開催しているコンテストがある。話を聞いた宇宙・通信クラスターでは、2016年度には3つのコンテストを企画している。Skonnectと呼ばれる通信分野の最新技術開発のコンテスト、Naviterraと呼ばれる衛星からの画像や電波などの地理空間データを応用した製品のコンテスト、ドローン本体やその応用のコンテストの3つだ。

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