スコルコボの研究棟の裏庭。小道の先に色鮮やかな研究棟が見える
スコルコボの研究棟の裏庭。小道の先に色鮮やかな研究棟が見える

 ロシアが国をあげて推進するイノベーションセンター、スコルコボ。2010年に本格的に始動したプロジェクトは、5年を超えた。前回に概説したように、スコルコボの目的は、天然資源に依存した経済構造からロシアが脱却するために、技術研究に立脚したイノベーティブな製品・サービスを事業化していく基盤を提供することにあると言える。そして、シリコンバレーが半ば自然発生的にイノベーションのための各種リソースが集積された地域であるのに対し、まさにスコルコボは国によって作りあげられた地域である。そこでは、事業拡大を支援する仕組みやスタートアップを担う人材を育てるための仕組みが用意されている。

スコルコボがターゲットとするスタートアップ

 スタートアップと言っても、そのタイプはいろいろある。ビジネスプロセスやオペレーションを刷新して既存市場を狙うタイプがある一方で、法制度や生活スタイルの変化を狙って仕掛けるタイプもある。スコルコボがターゲットとするのは、スコルコボ法(前回の「メドベージェフお墨付きのスコルコボが目指す道」参照)にも明記されているとおり、研究開発型、特に新技術を開発し商用化していくタイプのスタートアップだ。日本で例えると、サイバーダインやユーグレナが該当するといえそうだ。実際にスコルコボから支援を受け成長している企業例を2つあげよう。

 1つは、Dauria Aerospace。小型衛星を開発している会社だ。2015年に7000万ドル(約83億円:為替レートは2月4日現在、以下同様)の資金を調達し、インドの通信会社と2億ドル(約236億円)の長期契約を獲得した。設立は2014年7月で、スコルコボから375万ドル(約4億4000万円)のグラント(スコルコボ基金からの助成金。詳細は後述)を受けている。

 もう1つは、Eidos。手術や運転、レスキューなどの訓練用シミュレーターを開発している。中でも手術用のシミュレーターでは世界で4本の指に入るほどの実力で欧米諸国にも輸出されている。日本では順天堂医科大学が2015年に導入した。設立はスコルコボ開始間もない、2011年だ。

 スコルコボの支援内容は優遇税制から資金提供、専門家のアドバイスまで多岐に渡るが、支援を受けるためには審査を受けなければならない。審査を通過すると、スコルコボの参加企業(Participant)として認められることになる。

次ページ スコルコボの参加企業となるためには?